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インタビュー

観光×DX

観光DXから始まる、地方創生

株式会社日立システムズ
ビジネスクラウドサービス事業グループ
クラウドサービス事業部
DX推進プロジェクト
渋谷 透
株式会社日立システムズ
ビジネスクラウドサービス事業グループ
クラウドサービス事業部
DX推進プロジェクト
廣瀬 一信

「DX(Digital Transformation)」とは、テクノロジーを駆使して、既存のものを「あるべき姿」に根底から変えることだ。観光の未来はどのようにあるべきか。地方のポテンシャルを引き出すには何が必要なのか。数々の「観光DX」プロジェクトを通じて、地方創生に挑む日立システムズのメンバー二人に、彼らの取り組みの概要とそこに込めた想いを聞いた。

日立システムズの観光DX 地域の事業者とともに、
持続可能なビジネスモデルを構築する。

――テクノロジーを駆使して、観光の変革を成し遂げる。お二人は社会にとって意義のあるプロジェクトに向き合っているわけですが、その前提には解決すべき課題があると思います。まずは、地方そして観光が抱える課題について教えていただきたいのですが。

渋谷) このコロナ禍で大きな打撃を受けているのが観光業の皆さまですよね。まずは今落ち込んでいる観光業に関わる皆さまに寄り添って、少しでも回復のお役に立ちたいと思ってます。そのキーとなるのが地域の特性を生かした魅力を引き出すことで、ニューノーマルで変わってきている観光客が求めていることとマッチングさせるお手伝いをしたいと考えています。日本の観光産業はOECD加盟国いわゆる観光先進国に対して「娯楽サービス(コト消費)」の支出割合が低い(2016年OECD加盟国平均12%に対して日本は3%)というデータ(※1)が観光庁からも出ています。一般的には「着地型コンテンツ」や「体験型コンテンツ」と言われてますが、ただやみくもに企画しても失敗しますので、移り変わりが激しい観光客の消費行動や興味をデータを活用して分析し観光業の皆さまに活用頂くことをめざしてます。

廣瀬)確かに海外はコンテンツでしっかりお金を取りますよね。ベネチアでも、ゴンドラに乗るだけで結構な金額を取られますし(笑)。国内の観光地を見てみるとすばらしいおもてなしや観光資源を持っているのに、そのポテンシャルを生かしきれていない。一消費者としても、プロジェクトに関わる者としても「もったいない」というのが率直な感想ですよね。

渋谷) そう。本当に「もったいない」。だからこそ、私たちは「地域の観光事業者の皆さまとともに、持続可能なビジネスモデルを構築する」ことをめざしているんですよ。ただシステムを構築して、提供するだけでは本質的な問題解決にはなりません。お客さまに寄り添い、ともに歩み、ともに考え、解決策を導き出すことをめざしてます。実際にプロジェクトをご一緒させていただいている自治体や観光事業者の方々も、ありがたいことに私たちを一システム屋ではなくパートナーとして期待してくださっていることを感じてきています。

廣瀬) それはまったく同感です。われわれの資料ではシステムやテクノロジーの記述がないこともしばしばあります。モノではなく、コトを提供する。そうしたスタンスがなければ、変革を成し遂げることはできません。

イメージ:地域の事業者とともに、持続可能なビジネスモデルを構築する。

日立システムズのソリューション事例
データの利活用
価値に直結する
データ利活用が最大の強み。

――システムを導入して終わりではなく、持続的に成長していくためのモデルを構築する。その上で「データの利活用」は重要なポイントですね。

廣瀬) 観光客がどのように行動し、何を望んでいるのか。現状を正しく可視化しなければ、事実に基づいた施策も打てません。日立システムズでは、それらを単純に可視化するだけでなく、旅行に出かける前、旅行中、そして旅行後といったあらゆるタッチポイントにおける観光客の動態データと施策をつなぎ、 観光地の活性化をめざすデジタルマーケティングプラットフォームの構築を進めていきます。

――具体的に、どのようなソリューションを提案されているのでしょうか。

廣瀬) 一つは、「観光客情報の可視化」です。このソリューションは、Wi-FiやAIカメラによって観光に訪れた人を識別し、その動線を把握するというものになります。山口県長門市さまとは現在実証を進めています。観光客の動きを分析し、ビジネスチャンスにつなげることをめざしています。動きだけで何が分かるのかと考える方もいるでしょうが、天候や時刻、周辺のイベントなどさまざまな情報と組み合わせることで、例えば、「何を食べたいと考えているのか」といった志向を浮き彫りにし、「どれくらいの集客が見込めるか」といった需要予測も将来的には行うことができると思います。もちろん、観光客の方々に不快感を持たれないよう、個人情報を含めたデータの取り扱いに関しては最大限の配慮をし、必要な対策も施すことが前提です。

――動線から、そこまで有用な情報が得られるとは驚きですね。

廣瀬) そして、もう一つの代表的なソリューションが「SNS分析」です。定量的なデータだけではなく、旅行前、旅行中、旅行後の定性的な声を広く集め、施策に直結するデータを獲得・分析できることをめざしています。「家族で出かけたが、子ども向けのメニューがなかった」といった声が多ければ、飲食店のサービスやメニューを改善することができますし、地元の人も気づいていないような魅力や人気スポットに関する声があれば、そこに新たなチャンスを見いだすことができるわけです。また、来年度からはリアルタイムでお店の混雑状況を知ることができたり、旅行中にタイムリーな情報提供を行えたりする「コンシェルジュアプリ」の実証プロジェクトも行われる予定です。昨今ではコロナ禍の影響で、混んでいるお店には行きたくないといったニーズもありますし、旅をしていると隙間時間が生じて「何かを食べたい」「どこか見られる場所はないか」と思うようなケースも多いですからね。観光客のニーズにリアルタイムで応えることができれば、ビジネスチャンスは大きく広がります。もちろん、これらの情報は、すべて地域の事業者にフィードバックされ、おのおのの施策に反映されていくことになります。

――そうした要望を把握し、応えることができれば観光の在り方は大きく変わりますね。

渋谷) 私たちのソリューションは単なる「データの利活用」ではなく、「価値に直結するデータの利活用」をめざしたいと考えております。観光客の人数や動線といったデータを提供している会社は他にもあります。けれど、その観光客の動きにどのような想いや意味があるのか。それをどうビジネスに生かしていくかまでは、示せていないのが現状です。この点は大きな違いであり、強みにしたいと思っています。

図:観光客のあらゆるタッチポイントの動態データと施策をつなぎ、観光地の活性化を

日立システムズのソリューション事例
新たな観光体験の創出
仮想現実の世界から
現実の観光を向上させる。

――持続可能なビジネスモデルを構築するうえで、「価値に直結するデータの利活用」は不可欠なファクターですね。一方で、貴社ではデジタル技術を駆使した「新たな観光体験の創出」にも取り組まれています。

廣瀬) VRを使った仮想観光体験ですね。某自治体さまとの実証事業はその代表的な事例です。5Gで山岳ルートとリアルタイムで映像・音声をつなぎ、現地のガイドさんとリアルタイムでコミュニケーションを交わし、現地さながらの臨場感あるVR観光体験ができるというものでした。登山にとどまらず、仮想空間旅行を楽しめたり、お土産の購入体験ができたり…。私たちにとっても革新的なチャレンジでした。

――自宅にいながらにして、観光を味わえてしまう。すごいことですね。

渋谷) 確かにその気になれますよね。でも、観光事業者の立場からすると実際に来ていただかないと意味がない。だからこそ、私たちはこうした体験の中から、ユーザーのニーズなどの情報を獲得する仕組みを構築しようとしています。仮想空間という限られた空間では、行動の傾向が出やすくなるのではないかと期待しています。決して、「ただおもしろそうだから」「人の目を引く」という理由だけでやっているわけではなく、あくまでもデータの利活用と、その先のリアル観光地への波及効果を意識して進めています。

廣瀬) そうですね。それともう一つ、こうした取り組みには他の意味もあると思っています。それは観光の間口を広げることです。例えば、その観光地に有名な山があったとしても、高齢の方からすると登山はハードルが高いですし、そこまでの交通手段を新たにつくるにしても膨大な予算が必要になります。行きたくても行けない。そうした人にも、観光地の魅力を感じてもらえる。そうした価値をつくることもこれからの観光には必要なことではないでしょうか。

イメージ:仮想現実の世界から現実の観光を向上させる。

観光の未来 観光をきっかけに
地域の社会課題を解決する。

――お二人の話を伺うと、テクノロジーの進化が観光にもたらすメリットは非常に大きなものだと分かります。次はそれぞれが考える観光の未来について伺いたいと思います。その技術や知見で新たな観光コンテンツを創り出すといったことも考えられるのではないでしょうか。

渋谷) 観光をきっかけに、地域が抱える社会課題を解決するという取り組みがおもしろいと思っています。例えば「地域MaaS(Mobility as a Service)(※2)」との連携ですが、観光で新たな人の流れをつくり「地域MaaS」をうまく活用して二次交通手段を充実させる、さらに観光客と市民との交流のきっかけをつくるという発想もできると思います。観光産業は、交通、サービス、農業、漁業など多様な産業と連携して成り立っているので、新たな価値を生み出していけるポテンシャルはまだまだあると思っています。

廣瀬) そうですね。労働人口の減少なども私たちが解決していける社会課題の一つだと思います。実際に観光業でも人材の確保が難しくなっていますが、将来的には複数の宿泊施設の料理で使われる食材や仲居さんなどの人的資源などを需要予測から分析して、仕入れ量の適正化や人的リソースのシェアなど効率的に回していくといった方法も考えられます。そうしたノウハウを他分野に展開していければ、観光をきっかけに地域の課題を解決していくこともできるはずですよね。

――観光が訪れる人だけでなく、その地域で暮らす人たちの光明になる。そうなれば、すばらしいですね。最後に観光に携わる事業者の方々や自治体の方々にメッセージをお願いします。

渋谷) 先日、プライベートで関東圏の温泉に旅行に出かけたのですが、帰って来てからテレビでその観光地の特集をやっていて、妻が「ここも行きたかったね」とか「これも欲しかったね」などと言っていたんです。その瞬間ハッとしましてね。そこは全国的にも有名な観光地で、旅の前にそれなりに調べてはいたんですが、観光客が欲しい情報は届いてないんだなと改めて感じる場面がありました。まさにこういう「スキマ」を埋める所に日立システムズの価値があるのだと思っています。

廣瀬) 本プロジェクトに向き合う中で、お客さまに何とか貢献したい、「もったいない」を無くしたいと強く想うようになりました。お客さまに寄り添い、ともに悩み、ともに解決策を導いていくことで、確かな価値を創出していきたいものですね。

※1 出典:「訪日外国人旅行者の体験型観光コンテンツの購入促進に関するナレッジ集」(観光庁)(2022年2月18日に利用)

※2 MaaS:地域住民や旅行者の移動ニーズに対し、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うサービス。

イメージ:観光をきっかけに地域の社会課題を解決する。

ダウンロード可能な資料一覧

観光客の行動ログデータを
複合的に分析し価値を
生み出す取り組み

対 象

観光DXをご検討の自治体職員さま
観光事業者さま

概 要

日立システムズが考えるデジタルマーケティングプラットフォームの全体像をご紹介しています。

月刊 事業構想
制作パンフレット
「観光のニューノーマル
ICTを活用した公民共創の新戦略」

対 象

観光DXをご検討の自治体職員さま
観光事業者さま

概 要

観光客の利便性の向上と観光デジタルマーケティング推進に向けて山口県長門市さまと日立システムズがともに取り組んでいる「価値に直結するデータの利活用」の詳細をご紹介しています。

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