中国へ進出される日本企業の課題の一つに、会計業務が挙げられます。日本から中国へ赴任された経営者さまからは、日本に月次報告をする際、中国語が分からない上に、現地の経理担当者とコミュニケーションがとりづらいという声をよく聞きます。
今回は、中国の会計事情や会計業務における課題点について、当社とともに中国進出企業のサポートに取り組んでいる、株式会社ブリッジ 代表取締役の栗原様にお話しを伺うとともに、その解決をサポートする当社の取り組みについて紹介します。
株式会社ブリッジ
代表取締役
栗原尚子様
中国で会計ソフトといえば、「用友(ようゆう)」です。この背景には、2004年まで「用友」が国推奨の会計ソフトの1つであり、その影響で現在でも圧倒的なシェアを保持しています。また、2004年会計ソフトの規制緩和後は、外資系のソフトの使用は法律上許可されていますが、税務局の担当者が「用友」でないと受け付けてくれない、ということもあるようです。「『SAP』を導入したけれど書式が異なるといった理由から税務当局が受け付けてくれないので、「用友」にデータを入れ直して報告書を作成し、税務報告をする」というお客さまもいます。
中国の会計事情で日本と大きく異なることは、売上を計上するタイミングです。日本は信用取引前提で、請求書を発行したら売掛として計上されますが、中国では領収書ベースで処理され、入金があって初めて取引が完結します。これは、利益に関係なく売上ベースでかかる税金があることも影響しているようです。ほかには、勘定科目の違いが挙げられます。中国は国際会計基準に沿った勘定科目を使用しているため、日本で会計報告書を確認する際は、日本の勘定科目と照合させる必要があります。
中国の業務において、日本と異なる特徴があります。例えば、中国の経理担当者は、自分がするべき作業を他の人にさせると、“自分の存在価値がなくなる=仕事がなくなる”と考えるようです。よって、基本的に情報共有はせず、自分の仕事を一人で抱え込むため、業務全般がブラックボックス化しがちになります。また、日本と比べて引継ぎの文化がないこと、離職率が高いことも特徴です。中国人は、「一生同じ企業に勤めよう」というより、「別の企業に移って常に自分をステップアップしていこう」という意識が強いようです。突然現地スタッフが退職し、辞める際も後任の担当者への引継ぎがないため、前任者が手を付けていた処理は誰も出来ないといった状況になります。
他にも、国レベルの大きな決め事は中央政府で定められているが、その他細かい部分は地方政府に委ねられている事もあり、地方により異なる対応に迫られます。例えば、「上海では許されても杭州や廈門では処罰の対象になる」場合があります。地域による会計業務の差に悩まされている日本企業も多いようです。中国進出を考える際は、こうした地方行政の胸三寸や中国の文化を知っておくことが大切です。
中国では2011年10月から社会保険法が施行され、中国駐在の外国人に対して保険加入が強制されるようになりました。この保険加入で、日本企業の日本人駐在員の経費負担は約4割増加すると言われています。そのため、企業は管理業務を効率化し、現地の駐在員を減らす必要に迫られています。また、日本のIFRSの適用準備にも影響してきます。中国は12月決算ですが、日本の多くの企業は3月末決算であり、この3カ月のズレを合わせる必要があります。今後は、毎年同じタイミングで処理しなければならず、よりシステマチックかつスピーディーな処理が求められるようになります。
一方で、中国人スタッフの人件費も高騰しています。 給与は毎年10数%ずつ上昇しており、4~5年後には倍になるという話もあるほどです。効率の良い人員政策と、高い離職率への対応を考えなくてはなりません。
このような状況から、今後は現地の企業と日本の親会社との緊密な連携が必要になります。ところが、現地に赴任された日本人の担当者は、中国語に苦労し、かつブラックボックス化した会計処理にも困っています。「企業の実態を表す決算報告書ですら現地の人がいないと見られない」「日本語で、いつもの決算報告書の形で見ないと、実態が把握できない」といった話をよく聞きます。
日立システムズ
コーポレートシステム本部
第二システム部
小野和興
中国に進出された多くの企業は、現地から日本への会計情報の抽出を、中国側の担当者もしくは経営者の手作業で行っています。手作業による操作はミスが起きやすく、情報操作、不正につながる可能性もあります。この属人的な作業をシステム化し、人手を介することなく現地と日本の本社との緊密な連携を可能にするのが、株式会社ブリッジと当社の協業で2012年8月にリリースされた「明朗快計」です。
「明朗快計」は、ネットワークを介して中国各地でお使いの「用友ERP-U8」のデータを基に作られた会計報告書をリアルタイムに日本語で閲覧することができます。中国の勘定科目を日本の勘定科目にマッピングさせ、日本の会計報告書に合わせた形でデータを抽出することが可能です。また、P/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)のテンプレートを標準で用意していますので、お客さまご自身で数式を入れ、自由に帳票を組むこともできます。部門単位でP/Lを見る、個人単位の経費を見る、といったニーズに応えることも可能です。厳しさを増す中国での事業環境に対応する、迅速かつきめこまかな情報連携が可能になります。
今後は、現地でのニーズの高い人事労務の分野も視野に業務範囲を広げ、中国に進出する日本企業を支援させていただきたいと考えています。
2012年8月掲載
記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
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