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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:人とロボットの<楽しい>共生社会に向けて~雑談の重要性~

【第1回】理想の「ロボットとの雑談」:雑談とは

昨今、コミュニケーションロボットの開発が進み、自然言語での音声対話システム開発も盛んですが、それでもまだまだ、がっかりしてしまうロボットに出会うことも少なくありません。見本市やイベントなどで説明を聞いて期待が高まり、デモで実際にロボットに話しかけてみると、周りがうるさくて機能しなかったり、ことばが返ってきても的外れであったり、間が悪く困惑してしまったりします。私たちが理想とする「ロボットとの雑談」とはどのようなものでしょうか。

雑談とは何か

そもそも、雑談とはなんでしょう。コミュニケーションには、依頼、説得、教示、議論などさまざまな種類があります。そして、依頼なら受諾させること、説得なら納得させることが目的となります。一方で、このような明確な目的がないものが雑談です。例えば、会議が始まる前に交わす天気の話、帰り道で偶然一緒になった同僚と話す近況、気の置けない友達と話す愚痴などです。媒体は音声だけではなく、文字(インスタントメッセンジャーなど)や手指・表情(手話)などもあります。

雑談は、会議や面接などと異なり議長や進行役もいませんし、開始も終了も決められていません。うまく相手と合わせて開始し、話をある程度続けたあと終了しなければなりません。会話の終了を見てみても、実はさまざまな手続きがなされています。
例えば、電話が分かりやすいでしょう。そろそろ電話を切りたいと思っても突然、勝手に話をやめることはできません(そんなことをすれば、人間関係が壊れてしまいます)。雑談を終了させるためには、以下のような、さまざまなストラテジーが駆使されます。

新しい話題を導入しない/話が展開しないように簡単なあいづちだけを打つ/礼を言う(「電話くれてありがとう」など)/感想を述べる(「話せて嬉しかった」など)/次の約束をする(「また、会おうね」など)/相手の健康を願う(「まあ、身体には気をつけてね。」など)、挨拶への準備(「じゃあ、そろそろ」「うん、またね」など)、別れの挨拶「バイバイ」)など

このような一連の手続きを踏み、ようやく電話を切ることができるのです。

また、雑談では手をあげたり誰かに話す順番を決めてもらったりするわけではないのに、適切に順番が交替されていきます。3人以上で雑談していても、語尾のイントネーションや、話し手の視線、身体の向き、手の動きなどで、次に誰が話すのか順番が決まっていきます。相手が話し終わるのを待たずに言葉を重ねることもよくありますが、そのオーバーラップの位置やタイミングなども適切に行われていきます。このような雑談の法則を、人は生まれて育っていく文化・習慣のなかで無意識に身に付けていくのです。上手い下手はあっても日常生活において誰でもこれらのルールや方法で雑談を実践しているわけです。

なぜ雑談をするのか

では、目的もないのに私たちはなぜ雑談をするのでしょうか。ドイツの言語学者フリッツ・ヘアマンズは、明確な目的を指向しない雑談を交話的コミュニケーション(phatische Kommunikation) と捉えました。つまり、雑談は目的指向の道具的なコミュニケーションではなく、関係保持・触れ合い的なコミュニケーションと言えます。私たちは雑談をとおして、なんだか心地良いのでもっと話したいとか、なんだか気に障るのであまり話したくないなど、感じの良し悪しを判断しています。言語・非言語行動を駆使して上下関係や親疎関係における心的距離を少しずつ縮めることもできます。私たちは、良い人間関係を構築したり維持したりするために雑談をしているのです。

会議や面接などよりも、社会性やコミュニケーション能力、知性や教養、ユーモアセンスが露呈してしまうのが雑談とも言えます。それだけに、雑談が上手くなりたいという思いが強くなるのでしょう。ベストセラー『超一流の雑談力』をはじめ数多くの雑談力に関する本が出版されています。筆者らも言語学研究者の立場から、コミュニケーションアプリやチャット、手話による雑談的相互行為まで、日常生活のさまざまな雑談の本質に切り込む『雑談の美学:言語研究からの再考』を出版しました。

なぜ、私たちはロボットと雑談したいのか

私たちがコミュニケーションロボットとの雑談を望むのは、人に対してと同じようにロボットとも良い関係を築きたいということでしょう。人がロボットに一方的に命令するだけなら、雑談は必要ありません。雑談が求められているということは主従関係ではなく、ロボットを仲間、パートナー、家族として受け入れたいという気持ちの表れにほかなりません。心地良い雑談ができて初めて、本当の意味での人とロボットの関係が構築できることになります。

手で持ち口を近づけて話すタブレットではなく、身体を持ったロボットだからこそ、人と同じレベルの雑談が期待されます。身体を持ったことで技術的に難しくはなるでしょうが、一問一答だけではなく雑談ができることは、人とロボットが楽しく共生する社会において必須です。このような社会の実現のために筆者ら言語学関連の研究者も貢献できるよう努める必要があり、ますます分野を超えた連携が肝要になることは間違いないでしょう。

※『雑談の美学:言語研究からの再考』村田和代・井出里咲子編、ひつじ書房、2016年。

  • ※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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