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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:組織力が蘇る、LEGO® SERIOUS PLAY という手法 ~共感と共創の技術~

11.「100人のファシリテータ―が集うLEGO®SERIOUS PLAYコミュニティー・ミーティング」
   参加レポートCase1

2014年9月15日、16日の2日間、デンマークビルンドにおいて「LEGO®SERIOUS PLAY(以下、LSP)コミュニティ・ミーティング」が開催されました。このイベントは世界中で活躍しているLSP(レゴ・シリアスプレイ)のファシリテーター100人が一同に集って、知識や経験を共有して新しいアイデアを持ち寄ることでLSPの提供価値をより一層高めていこうという趣旨で開催されました。例年はレゴ社主催のアイデア・コンファレンスというイベントと同時開催されていましたが、世界のファシリテーター数が急速に増える中で今年はとうとう単独開催となりました。

今年参加のファシリテーターは以下の25か国からでした。

ヨーロッパ:デンマーク、ドイツ、オランダ、スペイン、イタリア、ベルギー、リトアニア、フランス、イギリス、スイス、ノルウェー、キプロス
アジア:日本、韓国、中国、シンガポール
南米:ウルグアイ、ペルー、コロンビア、エクアドル、アルゼンチン、パナマ、メキシコ
中東:イスラエル
北米:米国

このコミュニティミーティングでは各国のベテランファシリテーターが、それぞれの実践例からLSPの有用性を高めるためのプログラム開発のアイデア、ファシリテーション技術のティップスなどを惜しみなく披露して、LSPコミュニティ全体の底上げを図ろうという意欲が強く感じられました。次に多数の発表からおもだったものを紹介します。

主な発表

「LSPを活用した持続可能なビジネス開発」Trvium社(デンマーク)

北海油田に関連する大規模なプロジェクトなどを手がける同社は13年に渡るLSPビジネス展開の中で、持続可能なビジネス開発のための最重要課題とは何かについて発表。

「LSPとビジネスモデルキャンバス」AvMM社(デンマーク)

ビジネスモデルキャンバスを使ったビジネス向けコンサルティングの事例についての発表。

「Reflexive Learning 」Lisbeth Frolunde(Roskilde University、デンマーク)

デザイン理論、視覚的知識の形成などを専門とするFrolunde教授による発表。Roskilde大学において教授が手がけているLSPを活用した授業やワークショプについての実践報告と理論の解説。

「LSPとゲーミフィケーション」Impact Hub Munchen社(ドイツ)

ゲーミフィケーションを取り入れた独自のプログラムをブカレスト、シシリー、ロード・グリースなどでの実施例を報告発表。

「価値から行動へ、行動から習慣へ」TraiCo社(スペイン)

バルセロナの次世代サッカーエリートが集う学校、Escola LLEOXIII におけるLSPの授業実践例の発表。

「2つの部族が争う時」Quantum of Value社(イギリス)

BMW社などのコンサルテーション経験を通じてcomplex productsを生み出すためのコンサルテーションをLSPを使って実施する方法を見いだした同社の発表。

「LSPとLuminaモデルの併用による企業文化コンサルテーション」Innovation Culture(イギリス)

「合気道の精神とLSP」Kim de Keijzer(デンマーク)

創始者植芝盛平の考え方を解説し、合気道の精神とLSPの共通性について解説。LSPをより効果的に実践するためのヒントを提供。

「USI (Universita della Svizzera Italiana) LSP」(スイス)

オンラインコミュニケーションソリューションにおけるユーザー要件を導き出すためにLSPを活用した実践例。授業の一環として導入したもの。

このほかにも多数のプレゼンテーションやデモワークショップが欧米、南米、アジアの国々の代表者から発表されました。

今回はこの中からICT技術を駆使した大変ユニークな学校、バルセロナのEscola LLEOXIIIのケースを紹介します。

この学校にLSPを持ち込んだのはスペインでLSPを使ったコンサルテーションを展開しているTraiCo社です。まずはこの学校を簡単に紹介します。ELX(Escola Lleo XIII)はバルセロナ市内にある中規模の私立学校ですが、特別な子どもたちを預かって教育しています。特別な子どもたちとは名門 FCバルセロナに所属する子どもたちです。スペインのもう1つの名門レアル・マドリッドがマドリッド近郊の子どもたちの中から優秀な選手をスカウトしていますが、FCバルセロナ地方カタルーニャ州の子どもたちに加えて、世界中から優秀な子どもたちをスカウトしています。ELXでは5つの言語(カターラ語、スペイン語、英語、フランス語、オランダ語)が公用語として使われており、多くの国からの子どもたちを預かっているため、常に異なる文化に接する環境にあります。また教科書は一切使わず、全ての教育コンテンツはクラウド上にデータとして蓄積して子どもたちには1人に1台ずつiPadが渡されてるなどICTを積極的に導入しています。

LSPを使った特別授業に参加したのは11才の生徒29名。出身はアジア、アフリカ、南米、ヨーロッパ9か国。この中の25%の子どもたちがFCバルセロナに所属しています。加えて2名の教師が参加しました。LSPを使った特別授業は5時間という長時間に渡るものでLSPに加えてデザイン思考、AR(拡張現実)技術のAurasmaを使って設計されました。

特別授業の主な目的は以下の5つです。

  • 子どもたちの日常行動を学校がうたう価値に沿わせる
  • グループの一体感を醸成する
  • 教師たちをより巻き込む
  • 変化を定着させる
  • 簡単に理解できて、容易に実施できる

特別授業の設計にあたってはオニオン・モデルと呼ばれる行動理論がベースになっています。このモデルでは人の行動を理解するのに図のような構造があるとしています。

図:行動決定の心理構造を示すオニオンモデル

オニオンモデルにもとづいてこの特別授業では異文化背景を持つ子どもたちの信念や価値観に入り込むことなく、学校のうたう価値を理解させた上でその価値に沿った日常行動とは何か、自分たちはどのようにしたらそのように行動できるかということを考えさせ実践に移すための具体方法を子どもたち自身に考えさせようとしました。5時間に渡る特別授業の全体は次の5つのステージで構成されています。1)共感(グループ単位での共感レベルを向上させる)、2)定義(ELXの価値を理解して表現する)、3)アイデア、4)プロトタイプ、5)テスト(行動モデル、障害モデル、各自のプランモデルの3つのモデルを作って表現して評価する)。この中でステージ2)ではLSPに加えてビデオ教材とフォーカスグループでの活動、3)、4)、5)では自分の決意表明をビデオ記録します。このビデオ素材とLSPで作ったモデルの映像素材を使ってAurasmaにより後日の振り返りのためのARデータを制作しました。

導入部にあたるステージ1)では子どもたちがそれぞれに犬を作って、テーブルに並べてみることで参加人数分の異なる形が出来上がったことを見て「それぞれに考えていることは違う。違うアイデアを持ち寄れば未来に向けてよりよい意思決定をしていくことができる」と感じさせてグループで考え、行動するための共感レベルを高めます。子どもたちは自分の作った犬や樹木をテーブル上に配置して大きな公園を全員で作りあげることでこのことを実感することができました。

ステージ2)は学校で集い生活し、活動する意味や学校と生徒が掲げるべき目標についてビデオ教材を使って理解します。これがELXのうたう価値ということになります。子どもたちは自分なりに理解したELXのうたう価値をレゴブロックを使った作品として表現します。それぞれの表現した内容にもとづいて少人数のフォーカスグループに別れて、作品についてグループ内でストーリーを共有していきます。このステージでは子どもたちそれぞれの理解と解釈が表現される訳ですが、すでにステージ1)で互いの違いを認めて学び合うことの有用性を実感しているので子どもたちの学び合いは大変スムーズにいったとのことです。

ステージ3)、ステージ4)はステージ2)で表現した価値に沿った日常行動とはどのようなものか?を各自で考えレゴブロック作品として表現します。グループごとのワークテーブル上に多数並んだ作品の中から最も重要な日常行動を表す作品を15個、グループ内での話し合いを通じて選び出します。この15個の作品が示す15の日常行動を子どもたちがコミットする内容となります。テーブルの上ではステージ2)で作った価値モデルの中から関連するものを15の日常行動モデルの周囲に配置して「価値→行動」のつながりをストーリーで理解します。これをグループ内で十分検証するのがステージ5)です。

最後はすべての作品を大テーブルに集めて、子どもたちをその回りに立たせます。そして一人一人が自分のモデルを使って、自分がコミットすると決めた日常行動と関連するELXの価値について発表していきます。この様子をビデオ撮影して特別授業は終了となります。さて、発表した内容をこの日だけのものとしないよう、コミットした行動を定着させるためにARプラットフォーム技術 Aurasmaを使った記録映像を制作しました。具体的には学校の廊下に子どもたちが最終発表の際にまとめて1枚のワークシート(コミットする行動、価値が記してある)を張り出してあります。このワークシートには子どもたちの顔写真も添えてあります。子どもたちがiPadをこのワークシートの1枚に向けるとワークシートを書いた子どもの発表の様子とレゴブロック作品を記録したビデオがiPadで再生されるというものです。このしくみ自体の楽しさから子どもたちは廊下を通るたびに自分や友達のビデオを繰り返し見るようになった、その結果互いにそれぞれがコミットした行動を記憶するほど理解して実際の行動変容を実現するのに多いに役立ったということです。

LSP特別授業が実施されたのは2014年2月、それから6か月経過して学校では子どもたちの行動がどれほど変化したかについて詳しい調査をしました。その結果目覚ましい成果を上げることができたために、特別なボーナスとして子どもたちは全員がバルセロナ市内で大人気の娯楽施設に招待されました。

今回のコミュニティ・ミーティングで強く感じられたのは、LSPの適用範囲の広さとどの分野で応用されても参加者のマインドの奥深くまで入り込んでアイデアを表現させるそのパワーです。例えば企業向けのLSP活用でいえば、リーダーシップ研修やキャリア研修はもとより、会社合併後のベクトル合わせを本当に深いレベルで実現させようとした例、パーソナルな適応例では、複雑で深刻な問題を抱えた家族が互いに分かり合い、相手に関心を持つようになるまでの支援など、「こんなことにもLSPが使えるのか?」と長年LSPに取り組んできた私にも多くの驚きと発見がありました。質の高いLSPセッションを志すLSPファシリテーターのミーティングは来年もまたレゴブロックの聖地、ビルンドで開催される予定です。

[石原正雄 記]

筆者の紹介

石原正雄

株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ
ラスムセン・アカデミー プリンシパル
LEGO®SERIOUS PLAY®認定ファシリテータ

URL:

レゴブロックを使った新しい企業向け組織開発プログラム、LSP(レゴ・シリアスプレイ)のプログラム開発と指導のパイオニア。
広告代理店、リテール企業、外資系金融機関等でLSPを用いた指導を行う。
十数年以上に亘り、世界の子どもたちの創造性開発とSTEM教育(理数教育)にも従事し、国内およびアジア諸国での学校、アフタースクールで多数の実績がある。CSK、インタフリージャパン等での事業経験を持つ。
米国タフツ大学、MITらと新たな教育プログラムの開発にも深く携わる。
Tufts University, CEEO (Center for Engineering and Education Outreach)のアドバイザリーを務める。
著書に「スクラッチアイデアブック」、「スクラッチではじめるプログラミング」などがある。
国際基督教大学卒、米国ボストン大学大学院(経営情報システム)修士課程修了(MS)。

 

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