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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:非常識な人材育成の旅

【第4回】新しい働き方(2)~「副業」から「複業」への転換へ~「顧問」という新たな働き方に見る可能性

皆さん、こんにちは。場活師西村です。私は、企業の人事・育成部門に所属しながら、職場・現場の活性化を実現する場活師としてさまざまな取り組みを行っています。
本コラムでは、「非常識人材育成論」として組織における人材育成について連載し掘り下げます。それは、「非常識」な「現場事例」「意見」「視点」の切り口にこそ、変化の著しい環境下での人材育成のあり方があるのでは?という問題提起でもあります。
今回は、「副業」「複業」を切り口に、組織と個人のこれからのあり方を考えるシリーズ2回目です。

「顧問」という新たな複業スタイル

読者の皆さんは顧問というと、どんなイメージを持たれますか?元々は名誉職的な意味合いが強く、引退した役員、
現役の役員などを顧問に当てるケースが一般的なイメージかと思います。
顧問の定義を辞書で引くと、「顧問とは、企業や組織が行う業務について、意思決定を行う権限は持たないものの、
求められている高度な意見を述べるための役職」とあります。その実態は、どうなのでしょうか。
どうやら、近年、この顧問の概念が急速に変わりつつあります。

  • 週に1、2回来社し、社外の営業部長として営業戦略の立案、営業同行を通じたメンバー指導を行う営業のプロフェッショナル
  • 自社製品のカスタマーフロント業務の高品質化と生産性改善を指導する社外のCRM(カスタマーリレーションマーケティング)のプロフェッショナル
  • 財務責任者として複数の企業の顧問を掛け持ちし、資金調達、IR、銀行交渉、株主総会の切り盛りする財務のプロフェッショナル

そこには、顧問=名誉職との概念はありません。むしろ、社員と一緒に価値を生み出す知恵袋、自社では補えない
プロフェッショナルの知見をビジネスに生かそうとしている姿勢が目立ちます。
また、営業部長が社外人材なんて…まさに、従来の考えでは非常識ともいえる人材活用方法が存在します。
これらの実態を反映してか、現在、人材サービスの市場において「顧問」派遣サービスが急進しています。
今年春から大手の人材会社が、こぞって顧問派遣業に乗り出すなど、まさに市場がホットな状態にあります。
そこでは、何が起きているのか?
企業と個人の働き方、企業の人材活用の仕方にどのような変化があるのか?
顧問派遣のパイオニアである、エッセンス株式会社の米田社長に早速インタビューを行ってみました。
そこには、驚きの実態が…

「顧問派遣会社のパイオニア」~エッセンス米田社長インタビュー~


エッセンス社米田社長。
起業して6年目。順調に事業が成長。 


クリーンなイメージのオフィス。
顧問派遣事業のパイオニアとして軌道に

【エッセンス株式会社】

東京都中央区日本橋蛎殻町1-11-1 人形町シティプラザ 5F
TEL : 03-6661-7747(代表)
FAX : 03-6661-7746

<事業概要>
「新しい仕事文化をつくる」をコンセプトに以下の2事業を展開

  • プロフェッショナルパートナーズ事業
    (プロフェッショナルフェッショナルの紹介)
  • リクルーティング事業
    (ヘッドハンティングおよび人材紹介)

http://www.essence.ne.jp/

急拡大する「顧問」派遣市場に見る

筆者)ここ数年で、企業からの顧問派遣ニーズは急拡大しているようですが?

米田)はい、当社はこの市場のパイオニア的存在ですが、当社が顧問派遣を始めてから、多くの人材サービス会社が乗り出し、急激に市場が形成されつつあります。

筆者)なぜ、急拡大したのでしょうか?

米田)まず、人材の採用に関わるコストとリスクの問題があると思います。
成長している企業に共通する課題の大きなものは人材です。事業の拡大に合わせて、必要な人材を必要なタイミングで投入する必要がありますが、そのニーズに対して、従来は、中途採用中心で行ってきました。
しかし、景気の回復に伴い、どの企業も採用難に直面すると同時に、採用に関わるコストとリスクが表面化してきました。要は、需要と供給のアンマッチです。せっかく、採用コストをかけて来ていただいたのにミスマッチがおこるなど、組織内における重要ポストであればあるほど、適任者の採用は非常に難しいという現実です。
そのような人材の採用、活用、育成に関する諸課題を解決する1つの手段として、「顧問」の可能性が出てきたと
考えています。

筆者)具体的に、「顧問」とはどのような職種に携われるのでしょうか?

米田)現状では、大きくは2つのニーズがあると思います。
1つめは、ITエンジニアです。現在、IT系のエンジニアの採用は非常に困難な求人環境となっていますので、採用するより、採用した場合に出して欲しい成果を基準として、それを担保してくれるスキルがあれば、働き方や稼働日数は関係ないという考え方です。要は、業務の成果を保証する、まさにプロフェッショナルな人材ですね。
スキル要件が比較的明確になっているIT業界だからこそ、実現できる働き方といえます。

筆者)これは、わかりやすいですね。

「社外の非常勤営業部長」という驚きの働き方とその効果

米田)2つめは営業です。成長している企業の多くは営業拡販に課題を抱えています。例えば、新規のお客さま開拓ような営業課題に対して、企業のキーマンへのアプローチができるような人脈をお持ちの顧問を迎え、営業拡販に協力をいただくというケースです。
おそらく、現時点では、このニーズが主流だと思いますが、(後に触れますが)顧問となられる方も人脈だけでなく、培われたご自身の経験やバックグラウンドなど、それ以外の価値貢献の可能性があることから、当社ではキーマンへのアプローチだけでなく、「社外の営業部長としてご活用してみませんか?」と提案をしています。
例えば、現実に営業部長がいらっしゃる組織なら、営業部長の補佐として。部長不在の組織なら非常勤の営業部長としての活用です。

筆者)社外の非常勤営業部長ですか?

米田)はい、そうです。
驚かれると思いますが、現実に実績も出ておりますし、機能もしています。例えば、前者の部長補佐の役割では、営業戦略の立案やアプローチの仕方など、まさに部長補佐として組織全体の営業成果を上げるためのさまざまなアドバイスを行っています。要は、社外で培った経験など「社内における社外視点」を入れることで営業部長のパフォーマンスを上げるというものです。特に後者の場合、「名選手、名監督ならず」の言葉もあるように、必ずしも売上を上げる営業マンが優秀なマネージャーになるということではない、という現実です。組織マネジメントと営業スキルは全く別のものですし、優秀な営業マンを管理職に据えることで売上ダウンというリスクも危惧される点でもあります。このような時に、組織マネジメントに実績のある非常勤の営業部長を迎えることで、メンバーの育成や業績評価などのマネジメントを担っていただくと共に、次の管理職を目指すメンバーのロールモデルとしても機能していただくことを意図しています。確かに、非常勤ですから毎日席にいる訳ではありませんが、メールやSNSなどのコミュニケーションツールをつかいながら、部長としての業務を十分こなしていただいています。ちなみに、弊社の営業部長も非常勤で、現在弊社を含めて5社の営業組織の顧問を担っています。

筆者)なんと、驚きですね。ITによるコミュニケーションの進化によって、マネジメントそのものの概念が変わりつつある気がします

米田)そうですね。フェイストゥーフェイスのコミュニケーションも無論大事ですが、特に営業の場合、お客さまの訪問に時間が割かれているため、実質のマネージャーとのコンタクトは、顧客対応で困った時など、必要な時に必要なアドバイスをもらえるのが一番ありがたいのではないでしょうか。

筆者)確かに理にかなっていますね。

米田)当社でも、営業以外の業務に社外の顧問が数人サポートいただいていますが、社外顧問を活用する最大のメリットは「社外の知見を社内に還流」することによって、人材育成、業務の組み立てなどあらゆるプロフェッショナルによる「刺激」を注入し、結果として人や組織の成長スピードを格段に上げているということだと、身を持って確信しています。


米田社長とエッセンス社のメンバーの皆さん
この中には、顧問契約で働いている方もいらっしゃるとか

顧問という働き方を選択する人々

筆者)どのような方が顧問として活躍されるのでしょうか?

米田)まず、「実績」という「経験」をお持ちの方です。どのような仕事でどのよう実績を挙げたのか。その知識・経験・情報・人脈・スキルなどすべてが役立つと思います。むしろ、元の会社での役職や立場というより、その役割で何をやってきたのか、どのような成果を挙げてきたのか?が何より重要なのです。顧問という働き方は仕事のプロフェッショナルですから、自分は何のプロフェッショナルなのか?を意識している方となります。あとはマインドですかね。

筆者)マインドとおっしゃいますと…

米田)よく顧問というと、大手企業、著名な企業で役員や上級管理職をやられた方のセカンドキャリアのイメージで捉えられ、自分の肩書きや元いた会社のネームバリューで仕事ができる、と勘違いされる場合も少なからずあるのが現実です。しかし大事なことは、肩書きの先にある実績なり成果なり人脈なのです。自らのプロフェッショナル意識というマインドがないと務まらないと思います。また、異なる企業を複数かけ持ちすることが多いですから、プロフェッショナル意識を持ちながらも、担当する企業の組織風土や方法にうまく適合していく、柔軟なマインドも欠かせません。

筆者)どのような方が顧問という働き方を選ばれるのでしょうか?

米田)初期の頃は、大手企業、著名な企業で役員や上級管理職をやられた方が多かったですが、最近では40代50代の方が増えているのが特徴です。

筆者)40代の顧問って意外な気もしますが、どのような背景で顧問業を選択されるのでしょうか

米田)顧問業を選択される方は、基本的には実力のある方が多いです。しかし、さまざまな事情、例えば、個人の力より組織の論理を優先するようなマネジメント、組織の古い体質やしがらみを嫌ってスピンアウトしてくる方が少なからずいらっしゃいます。その意味では、「社外で通用するほどの実力者を活かしきれない組織のマネジメント」という課題の裏返しだと思います。
また個人の側から見ても、一方的で従属的な関係を嫌うなど、組織と個人の関係性が変わりつつあるのを感じています。

顧問事業の今後の可能性、「ナナサン」

筆者)事業の今後の可能性についてお聞かせください

米田)現在は、IT分野と営業分野が主流となっていますが、今後、その領域は確実に広がっていくでしょう。現に、顧問を充分活用されている企業さまでは、「経営者のメンター的な役割」「新規事業立上げのサポート」「IR支援のためのCFO機能」「CRM領域における顧客対応力向上のための支援」など、さまざまな領域におけるニーズが徐々に出てきています。但し、そのニーズに供給側である顧問人材が追いついていない、というのが現実なです。今後、企業側の多様なニーズが高まれば高まるほど、そのニーズに対応できる顧問の方のバリエーションが増えていくと考えています。

筆者)と、おっしゃいますと?

米田)個人の視点に立てば、さまざまなビジネスキャリアを活かす機会が増えることになります。つまり、供給側の可能性が広がってくる、と思います。現在は、フリーランスや独立開業して顧問業をやっていらっしゃる方が主流ですが、今後は、現役の社員が複業として顧問を行うようになる可能性も充分あると思います。現に当社のCFOは、メインの会社に在籍しながら、当社含めて3社の財務顧問を担当されています。これは、副業禁止をうたって自社内に縛り付けるより、社員一人ひとりのキャリアや能力開発を考えた場合、他流試合を推奨することで、社員の能力開発や自律性を育成し、結果として組織と個人双方にメリットが生まれることでもあります。いわば、新しいワークスタイルによる価値です。
当社では今後の顧問ニーズ拡大に伴い、現役社員による顧問業を世に問おう、と考えています。このような、現役社員による社内7割、社外3割の働き方を当社で「ナナサン」と名づけ、「ナナサン」ワークスタイルを世の中に広めようと試行錯誤している最中なのです。

驚きの事実:最新の研究から見えてきた能力開発の仮説

エッセンス社米田社長のインタビューには、急速に変化する人材の活用、働き方の新潮流がダイレクトに伝わって
きます。ここに、この新たなワークスタイルを後押しするような驚きの事実があります。

(株)インテリジェンスHITO総合研究所が2011年3月に実施した現役のビジネスマン(35~55歳の正社員1698名)に対して行ったWeb調査 で、仕事の成果と能力開発に関して、以下の驚くべき傾向が明らかになっています。以下がその要点です。*(株)インテリジェンスHITO研究所 機関誌『HITO~ミドルの未来』(2012、8、31発刊)より引用)

  • 仕事の成果(パフォーマンス、専門性、仕事充実感)に影響を与えているのは「社外の専門家との交流」である
    →一方、社内人脈からの学習は仕事成果の向上と統計的有意差がない(効果がない)
  • 年齢と仕事の成果の高まりは影響していない。
    →むしろ、小規模(100名~300名)の組織長となるなど、 役職が上がることによる生まれる、ダイナミックな仕事経験やさまざまな人々との出会い、メンバーの成長などを通じて、成果が高まる傾向にある
  • 成果を高めるための上司や職場の支援としては、 自主裁量の容認が効果的。だが、同時に、仕事上の高い要求の必要性を示唆
  • 仕事の成果に、人事制度はほとんど影響していない。

読者の皆さんには、この調査をどのように受け止めますか?人事や育成部門に携わる方には衝撃の内容ですが、実際の自分の体験に照らし合わせてみると、「なるほど」と、納得する部分が多いように思います。いかがでしょう? 成果を出す人材育成には、機会、場、社外との交流が必要で、年齢は関係ない。この事実は、

  • 副業を禁止し社内業務に専念させる。
  • 組織内育成機関で純粋培養し社内交流に多くの時間を割くマネジメントスタイル
  • 一般的には、年齢とパフォーマンスの相関を前提として、一定年齢でのポストオフの実施や雇用契約の切替えで定年延長する再雇用制度などが主流など、組織内人事制度の当たり前の施策とことごとく対局に映るのは、私だけでしょうか?

変わらない企業の論理が結果的に個人の能力開発を阻害する

エッセンス社の米田社長のインタビューを通じて強く感じたのは、組織と個人の新たな関係づくりの必要性です。
顧問派遣の実態、HITO研究所の調査で明らかになりつつあるのは、従来の組織都合優先での人材育成では、人事部が声高に唱えている「自律性」「ポータブルスキル」は養えない、という現実です。
むしろ、組織内教育や制度に固執すればするほど、結果的に年齢と共に活躍度が低下してしまう内弁慶人材を量産してしまっているという、なんとも皮肉な結果です。
前号で指摘した組織と個人の新たな関係づくりの答えの1つは、顧問ビジネスを支える複業ワークスタイル、プロフェッショナル人材のキャリア意識にあるような気がしてなりません。
次回のコラムでは、実際に複業に従事されている何人かのプロフェッショナル人材へのインタビューを通じ、激動の時代を生き抜くビジネスキャリア、ポータブルスキルや自律的マインドを育成するための個人と組織のあり方に迫りたいと思います。

今号の独り言

皆さん。「生涯一度切りの仕事人生。デザインできていますか?」そこで、一句。

「顧問業 個を問う(個問)故に 価値を生む」
「複業の 価値(勝ち)にこだわる 顧問(個問)人」

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

次回コラムの予告

副業から複業で活躍するプロフェッショナル人材に見る、新たなビジネスキャリア学

 
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