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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:非常識な人材育成の旅

【第1回】新入社員教育

6月になると4月に入社した新入社員が研修を終え、配属する頃ではないでしょうか。フレッシュな新入社員を相手の育成は、担当者にとって、最も手応え・やりがいを感じるといっても過言ではないでしょう。

第1回目のコラムは、新人育成の非常識&ユニークな取り組み・意見に迫ります。

事例1:他社の新人を教育し合う~クロスオーバー型マナー研修

他社と合同で行う研修はよくあるケースですが、全く業種業界の異なる企業(Access、ヒューチャーアーキテクト、日立ソリューションズ、伊藤忠テクノソリューションズ、大塚商会の5社)が協力し、相互に他社の新入社員のマナーを教育し合うというユニークな取り組みを紹介します。なんと、この取り組みは、10年もの間、継続しているそうです。その1社に伺いました。

筆者)5社合わせると数百人の規模になる新人たち。1社だけでも大変なのに、なぜ、そこまで手間暇かけて行っているのでしょうか?

担当者)「この取り組みの最大のポイントはそのLIVE感。なんです。ビジネスマナー、会社紹介など、実際は「外」のお客さまとのやりとりですが、研修は限られた「内」だけで行うため、どうしても予行演習・模擬とならざるを得ない。そこで、「研修をより実践型にしたい」と、同じ課題を持っている人事担当者が数社集まり、より実践に近い内容を、ということで10年前からスタートさせました。」

内容は、5社の新人が各社ごと3人組になり、与えられた期間中に、自社以外の会社にアポイント(30分の時間制限有り)をとって、自社の会社、事業の説明に行く、というもの。会社説明資料も、各チームで作成。30分の時間制限を考えて作成することが求められる。熟練のビジネスマンにとっては簡単に思えるが、実際にやってみると…

  • 「出口を間違えた(東口と西口を間違えた)」
  • 「場所が分からない。別館に行ってしまった」
  • 「電車が遅れた」
  • 「資料説明が長引き、プレゼンが時間オーバーした」
  • 「担当者が少し遅れてきて…」
  • 「名刺交換で結構時間がかかってしまい、説明できなかった」

などのハプニングが続出。しかし、一切サポートやアドバイスはしないそうです。

また、他社の担当者も研修ではなく日常業務の一環として対応するため、実際に、新人が時間に遅れた場合「時間がない」とアポイントをキャンセルすることもあるそうです。

研修という位置づけですが、臨機応変な判断が必要なまさに実践、実務。おまけに、お客さまである他企業の担当者から、訪問者ごとにフィードバック(下図参照)をもらえることもあり、新人たちには痛いけれどありがたい体験となっているようです。

担当者)「実践の体験も大事ですが、一番大切なことは、“振り返り”なのです。教室で学んだことが、実際ではそのとおりにいかないことばかり。そんなとき、“何が起こっているのか”“どうするのか?”など、各チームや自分でとった判断なり行動を、丁寧に振り返るのです。その振り返りを通じて、初めて教室で学んだことが“生きたノウハウ”として新人たちの血肉になるのではないでしょうか」

「教室から現場へ」「教室と現場との連動」の工夫が見事かと。何より、この取り組みが10年もの長きに渡り継続されていることが、すべてを物語っている気がします。

事例2:“昭和”を感じさせる? ~内定者によるお茶売り飛び込み営業体験

最近、内定者や新人向けの研修において体験型アプローチが増えているようです。富士山に登る、チームでプレゼンする、何かを作る、など、社会人としてスタートをきるための動機付け(会社理解など)や基本動作(チームワーク、考えるクセなど)を体験させることが主な目的です。

ご紹介したい事例は、まだ入社していない内定者の段階で、実際業務に近い体験をさせるという商社X社のお茶売り体験で、まさに昭和を感じさせるベタな体験研修です。

ルールは簡単。1,000円と2,000円2種類のお茶を用意し、内定者に対象営業エリアを割り振りして、よーいドンで販売開始。条件は、「会社で働いている個人」を相手に販売することだけ。2日間かけて、どれだけ売れるかを競う、というまさに物売りの原点である営業体験です。お茶はこの商社の商材ではないため、商材と社名だけが違う(*)まさに営業体験そのもの。

*実施に当たっては、入社予定の自社とは別の研修会社の名刺を持って実施(アルバイト契約)

内定者とはいえ、大学生。また、ほとんど営業経験のない者が、何の予備知識もなく、いきなり2日間もの飛び込み営業を体験します。時代錯誤のような気がしますが、この取り組みは最近になって始めたというのも驚きです。

飛び込み営業を始めた2日後、全員で丁寧な、振り返りが行われます。

  • 1つも売れなかった者
  • トップセールスを記録した者
  • 朝から晩まで同じ会社の周りをウロウロしていたら「まだ居たのか?」と同情で売れた者
  • なんとお茶屋さんに売った者
  • 怒られた者
  • 名刺を受け取ってさえもらえなかった者、など

そこでは、筋書きのないドラマが語られます。

苦労した体験を語りながら思わず感極まる者、人の情けに触れ人の温かみを感じた者、一つも売れずに自信を喪失する者、トップセールスの同期を羨ましく思う者、悔しい思いをする者、想像以上に大変な業務に嫌になる者、これからが不安になる者、など実にさまざまな体験と反応が振り返られるそうです。しかし、「確実に彼らは何かを学び、気づき、今まで漠然としていた『営業職』という、やがて数カ月後に自身が携わる仕事に、初めて真正面から向き合い始める」と、人事担当者はいいます。

内定者にしては、過酷、無謀ともいえる非常識な体験を通じ彼らは何を学ぶのでしょうか?

予定不調和な挫折体験の大切さ

事例を取材しながら、筆者が若かりし営業マンだった頃、映像で見た“てんびんの歌”という物語との共通点を思い出しました。

この映像は、営業マンの教育教材として、過去、盛んに使われていた昭和初期の近江商人の物語。小学校を卒業した近江商人の息子が、親から「跡継ぎになりたければ、鍋蓋を売れ」と命じられ、鍋蓋を“てんびん棒”にかついで売りに行きます。まさに商売人としての新人教育です。

しかし、鍋でなく鍋蓋を売るのです(難易度が高い)。少年は、あの手この手でチャレンジしますが、案の定、全く売れません。そんな挫折体験を続けるうちに、徐々にそれも無意識に少年はモノを売ることの本質に気づき、最後は商売として成り立っていく、というベタベタな物語。まさに、「昭和の営業」時代の教本ともいえる素材です。

この映像で一貫して語られるのは、「売る」という行為の本質です。それは、モノを売る前に「自分を売る」。

営業に限らず、どのような職種業務であれ、人と人とが相互に関係しながら作り上げていくことが「仕事」である以上、社会人としての第一歩は、まさにいかにして自分を売る=信用を得るか、に尽きるといえます。

その視点で新人育成を捉えれば、研修で教えられる挨拶などのマナー、名刺の渡し方、各種のビジネス知識・スキルの習得は、自分を売るためのツール・武器といえます。しかし、それらはあくまでサブ要素に過ぎず、育てるべきはツールを使いこなす一人一人の個性・人間性なのかもしれません。

だとすれば、新人が磨き習得すべき本質とは、学生時代では向き合えなかった「仕事をする己自身に向き合い、新たな自分の可能性に気づけるか?」、社会や組織の中で「いかに自らの売り(信用力)を磨き続けるか?」であり、まさにそのコツを学ぶことが新人育成ではないか、と思えるのです。
さらに、それらは教育研修の教室で「教えられ」「知る」のではなく、お茶売りや鍋蓋売りを通じた自らの体験、それも予想もつかない予定不調和の挫折体験と、その体験への振り返りを持って初めてそれぞれが「学ぶ」「気づく」ものではないのでしょうか。

大切なことは、教科書でなく現場体験から学ぶ。だから、まずやってみる。振り返る。
それが、今回取材した事例やかつて見た映像を通じて伝わってくる“核”である気がしています。

体験をつなげることが、予想もしない可能性を生む

今回取材させていただいたX社の事例で特に印象的だったのは、一連の体験研修の予想外の効果です。

それは、内定者が数カ月後に社員として営業をした際、改めて自社のブランド・知名度の凄さ・知名度に一様に気づくそうです。それは、無名に近い研修会社の名前でお茶売り体験をして門前払いされた経験があったからこそ、「○○商社です(X社)」と名乗ったときの、知名度、担当者の受け止め方の明らかな違いをリアルに感じ取ることができ、あらゆる点における自社の凄さを、このとき初めて腹落ちするそうです。

X社のケースでは、“素っぴんの自分”でチャレンジしたお茶売り体験だからこそ「自分という個人の未熟さ」を感じ、組織人として営業したからこそ「組織に守られている自分」を感じることができます。その体験と振り返りを通じ、意図せず自然に「組織の凄さ」「組織へのロイヤリティー」が芽生え始めます。それは、地道な予定不調和な体験の連続という種まきがようやくつながり、実ったときに生まれる真の成果といえる気がします。

今号の独り言

若い人が没個性といわれますが、むしろ育成する我々が画一的・没個性的、予定調和的になっているのではないでしょうか? 20世紀は組織の時代でしたが、21世紀は個の時代。一律一斉の育成の中にも、それぞれの予定不調和やドラマをいかにして生み出すか? そして、振り返りを通じていかに気づき学ぶか? が私たちに求められている気がしています。
関心を持って、囲わず、構わず、支援せず。
究極の予定不調和で、一人一人の生物的動物的本能に火をつけることが、一番の王道かもしれません。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

次回コラムの予告

副業のススメ~二足の草鞋が幸せなビジネスキャリアを作る

 
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