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株式会社日立システムズ

導入事例スペシャル 大阪市立大学様「疲労・ストレス測定システム」開発・導入プロジェクト
人々の疲労度やストレス状況を“見える化”する「疲労・ストレス測定システム」。今までにない未病領域のデータ収集と解析が、日本の「健康科学」や「先制医療」の未来を拓く。

「疲労・ストレス測定システム」は、疲労測定分野で先進的な研究と技術開発を続ける「疲労科学研究所」の自律神経測定器をベースに、日立システムズのデータセンターを活用して開発した簡便な疲労測定システム。「予防医学」「先制医療」への本格的な取り組みが求められるなか、その可能性に注目が集まっている。日本が世界をリードする疲労研究の現状と、「疲労・ストレス測定システム」がもたらす新たな価値などについて、関係者の話を交えて紹介する。

システム開発の発端になった「震災復興支援プロジェクト」

現代の日常生活において、疲労やストレスがさまざまな病気の引き金となっていることは、よく知られている。しかし「疲労」は人それぞれで異なる感覚的な症状とされ、その度合いを測る方法は確立されていなかった。疲労を定量的に把握し適切な対応を行っていくことは、発病を抑えて健康な状態を維持することに役立つだけでなく、医療費の抑制などにも寄与する。「疲労研究」は、現代の医療・健康を考えるうえで、非常に重要な分野だ。

日立システムズでも疲労科学の研究者や日立グループと連携し、疲労やストレスを早期に発見するシステムの開発に取り組んできた。その発端になったのが、東日本大震災以降に新設した「震災復興支援プロジェクト」である。このプロジェクトでは、被災地域の復旧・復興に貢献するサービスを開発・提供してきたが、その一環で、被災地の住民や自治体職員のメンタルヘルスケアに役立つサービスとして「疲労・ストレス測定システム」の開発に取り組み、2013年2月に販売を開始した。
このシステムは、従来、問診に頼ることがほとんどだった疲労やストレスの状態の把握を、主観的な思い込みを排して、科学的・定量的に計測する点で画期的であり、被災地のみならず、健康増進を願う人の間で、すでに活用が始まっている。


震災復興支援プロジェクトの 一環として、被災地に 無線LAN機器を設置

解明された疲労のメカニズム。その“主役”は活性酸素

「疲労・ストレス測定システム」は、どのようにしてストレスや疲労の度合いを測るのだろうか?
ベースになっているのは1990年代から疲労研究を進めてきた医学博士、渡辺恭良氏らの研究成果だ。渡辺氏は1999年に26の大学や研究所、企業で組織された文部科学省研究班の代表に就任。研究プロジェクトは、疲労のメカニズムの解明と疲労の病態を解明するという大きく2つの方針でスタートした。

研究の中で見えてきた疲労のメカニズムの“主役”は、活性酸素だった。
「人間の体内で働いている細胞は、オーバーワークになると活性酸素を発生します。この段階で疲れのシグナルが体から出るのですが、ここで休まないと活性酸素を処理しきれず、重要なたんぱく質が酸化してしまいます。いわば“さびついた”状態です」と渡辺氏。

「活性酸素が増えると、細胞が傷ついた状態になり、休息をとらないままでいると、細胞が傷ついた状態のまま脳神経や筋肉に残り、結果として疲労状態が続いてしまいます。新しいたんぱく質を作ったり、“さびた”たんぱく質を元に戻したりするには、睡眠や休憩がどうしても必要になる。それができないまま活動を続けると、最終的には過労になってしまうのです。」 
この活性酸素の発生に対抗する要素は3つあると、渡辺氏は説明する。 「1つは、細胞の傷害を防ぐための抗酸化剤。2つめは、傷ついたたんぱく質を修復するためのしくみ。3つめが、細胞の傷害を見つけるしくみです。逆に言えば、これらがうまく機能しないときに、人は病気になったり老化したりするということです。」


大阪市立大学
健康科学イノベーションセンター 
センター所長
独立行政法人理化学研究所ライフ
サイエンス技術基盤研究センター長
医学博士
渡辺恭良氏

プロフィール

1980年、京都大学大学院医学研究科博士課程を修了。同大学放射性同位元素総合センター助手、大阪医科大学講師、大阪バイオサイエンス研究所研究部長を 歴任し、1999年に大阪市立大学に教授として、また、2006年に独立行政法人理化学研究所に分子イメージング研究プログラムディレクターとして着任。現在は、大阪市立大学の健康科学イノベーションセンター所長や大学院医学研究科特任教授を務めるほか、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター長、さらには、関西バイオメディカルクラスター健康科学推進会議議長、日本疲労学会理事長を兼任。専門は、神経科学と病態医化学。

疲労のメカニズムの解明をベースにした測定装置のアイデア

「体がさびる」……主観的な印象に過ぎなかった「疲労」の実態とメカニズムが見え始めた。その一方で、疲労の客観的な評価法の確立をめざす研究も進められた。疲労とは、具体的に体のどういう状態を指すのかを明らかにしようというのだ。研究プロジェクトを主導した医学博士の倉恒弘彦氏は、「自律神経機能」「身体活動の量」「睡眠の状態」「血液中の活性酸素」「脳機能」の5つをバイオマーカー(病気の進行を定量的に把握するための指標)の候補に選んだ。

疲労のバイオマーカー研究を進めた倉恒弘彦氏は、比較的容易に測定できる自律神経の状態(交感神経と副交感神経のバランス)を心電派と脈派によって把握し、異常が見られれば、他の項目の検査に進むという疲労評価の手順にたどりついた。そして具体的な測定システムの構築に進んだ。心電派と脈派を簡単かつ正確に読み取るセンサー技術、さらに心電派と脈派を同時に測定し解析する新たなシステムを開発し、完成させていく。その一翼を担ったのが日立システムズだった。
試行錯誤を経てつくりあげられた「疲労・ストレス測定システム」は、疲労を定量的に把握できる点で、また、その計測が簡便に行える点で画期的だった。


測定シーン

測定器は持ち運びができる小さなハンディタイプ。左右のセンサーに人さし指を置き、2分半ほど安静にするだけで心電波と脈波の測定が完了する。結果は、ネットワークを経由して日立システムズのデータセンターに送られ、「疲労解析サーバー」が瞬時に解析。


結果レポート(例)

返送される結果レポートには、自律神経機能年齢や心拍変動、交感・副交感神経のバランスが数値やグラフで表示され、「正常」「注意」「要注意」の3段階で分かりやすく評価される。疲労・ストレスの度合いが客観的な数値で確認でき、メンタルリスクの予防、早期発見による適切なケアおよび回復状況の確認が可能となるのだ。

疲労・ストレスを把握するには、血液や唾液を採取し、疲労を測定する方法もある。しかし、採血を負担に感じる人もいることや、どちらの測定も特別な設備を要し、時間がかかるという課題があった。
「疲労・ストレス測定システム」は、この点を大きく改善。日立システムズが提供するクラウドサービスを利用することで、計測結果の瞬時の解析と回答も可能となった。さらに、履歴の閲覧や統計分析などデータベースを通じた継続的なサポートや、「抗疲労」「健康増進」に役立つ商品やサービスの開発にも活用できる。


関西福祉科学大学
健康福祉学部 学部長(教授)
大阪市立大学医学部
疲労クリニカルセンター客員教授
東京大学大学院
農学生命科学研究科 特任教授
医学博士 倉恒弘彦氏

プロフィール

医学博士。1987年、大阪大学大学院医学系研究科博士課程を修了。同大学微生物病研究所の助手、大阪大学医学部講師・助教授を経て、2002年より関西福祉科学大学健康福祉科学部教授。大阪市立大学医学部の客員教授も務め、同大学疲労クリニカルセンターにおいて患者の治療にあたる。東京大学特任教授も兼務。平成21年度(2009年)より、下記厚生労働省研究班の代表研究者を務める。平成21~23年度「客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成」研究班、平成24年度「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法検証普及」研究班、平成25年度より「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班(3年間)。専門は、内科学、疲労科学。

システムイメージ図

大阪市立大学 健康科学イノベーションセンター様への導入と本格活用の開始

「疲労」を定量的に示し“見える化”するシステムの開発は、「予防医学」「先制医療」の分野に大きなインパクトを与えるものとなった。
システムの活用に先頭を切ったのは「健康科学」の分野で先進的な研究を進めている大阪市立大学だ。同大学は2013年7月、グランフロント大阪に渡辺氏をセンター所長とする「健康科学イノベーションセンター」を開設。そこで展開する主要な取り組みの1つである市民参加の「健康見守り隊」において「疲労・ストレス測定システム」を導入し、会員に対する定期的な疲労測定と測定結果に基づくコンサルテーションを進めている。

これまで、病気を発症し、病院に行くことで計測された健康状態に関するデータはあっても、健康、あるいは多少不調を感じながらも病院には行かない方のデータは収集されていなかった。しかし、研究機関や企業だけでなく、市民にも大きく門戸を開いた「健康見守り隊」では、「疲労・ストレス測定システム」を使って疲労の測定が定期的に行われている。これは、未病の方のデータも収集され始めたということであり、データの解析や追跡を通じて、「健康であり続けるための秘訣」が明らかにされることが期待されている。


「疲労・ストレス測定システム」を体験する市民の方

大阪市立大学 健康科学イノベーションセンター「健康見守り隊」への導入事例詳細はこちら

多くの企業・団体との連携で拓く先制医療の未来

疲労・ストレスの予防や軽減は、病気の治療とは異なり、医療に限定されたテーマではない。日常生活に関わり、多様な業界と一体となった健康事業へと発展していく可能性をもっている。実際、「疲労度に関するデータ」の収集・解析が可能になることにより、「抗疲労」「健康増進」への取り組みが大きく動き始めた。すでに同センターへは疲労・ストレスの測定に関して、問い合わせが数多く寄せられている。

「これまで私たちが収集してきた疲労の測定データは、新たな抗疲労商品やサービスの開発に役立てることができます」と話すのは、同センター副所長の堀洋氏。
「例えば、オフィス家具メーカーとの共同研究により“疲労が少ない”オフィスづくりを進めていたり、食品や住宅などの分野の企業や団体とも、『抗疲労』あるいは『健康増進』の視点からさまざまな共同研究を行っています。今後蓄積される何万という未病の人のデータがもつ可能性は、非常に大きいといえるのではないでしょうか」と堀氏は語る。


大阪市立大学
健康科学イノベーションセンター
センター副所長・特命教授
理学博士
堀洋氏


大阪市立大学
健康科学イノベーションセンター
古澤美香氏

「疲労・ストレス測定システム」が健康科学の次の時代を切り拓く

「疲労に関するデータ収集とその応用」の段階に入った日本の疲労研究が、多くのユニークなサービスや商品を生む日も遠くない。
「疲労研究は日本の研究が世界で最も進んでおり、測定方法の確立はそれを立証したものです。また、今後のデータの蓄積は、研究の質をさらに上げていくきっかけになるでしょう。日本の研究が世界のグローバルスタンダードとなることも夢ではありません」と堀氏は語る。
「そのためにも、まず量・質ともにすぐれたデータベースをつくることが重要です。その上でセキュリティにも配慮しなければなりません。その点では、データを一元的に管理できるクラウド環境が大いに活躍すると思います。」

「これまで医療分野では、カルテや事務書類などの電子化が進んできました。次は一般の方の日常生活に関するさまざまな情報の電子化が課題です。国も国民番号制、健康保険証や薬の手帳、母子手帳などの電子化・標準化を進めています。自分で測った体温や血圧、疲労やストレスなどのデータもそこに合わせれば、非常に有力な『健康管理のためのデータ』になるでしょう。そして、医療場面だけでなく日常生活に関する電子化されたデータをITでネットワーク化して、管理・運用していく。これが次のテーマです。その点では日立システムズにも大いに期待したい」と堀氏は語る。

「疲労・ストレス測定システム」の開発をともに担った日立システムズの社会インフラ事業グループの松原孝之も「世界のトップ水準にある疲労科学を、ITの力でサポートできたことに大きな意義を感じた」とこれまでの開発を振り返る。
「『疲労・ストレス測定システム』は、クラウド環境を活用することで、PCに解析するためのソフトウェアを導入しなくても、取得したデータを解析できます。また、複数の場所で測定したデータを一元管理することが可能です。機能の更新もセンター1か所で行えますので、素早い対応やコスト削減にもつながります。集積されるデータの管理に細心の注意を払いながら、今後のデータの取得・活用にさらに協力していきたいと思っています。」さらに松原は続ける。
「発表以来この1年で、システムの認知度は大きく上がりました。誰もが簡便に疲労が測れるというのは本当に画期的なことで、これからも普及に努めたい。将来的には、家庭で当たり前に疲労が測れるようにしていきたいと思っています。“ITで疲労に苦しむ人を救う”ことが、私たち日立システムズの願いなのです。」

日立システムズの営業の第一線で指揮を執る第一営業本部の本部長 堀田誠はこう語る。
「疲労は業種を問わず関心が高い分野です。消費者に対して、疲労の測定をベースにした健康科学の推進がいかに大切で価値のあることか、私たちも大いにアピールし、より多くの場所で、この測定システムを活用していただきたい。また、有意義なデータを集めていきたいと思っています。」

多くの企業にシステムの導入を促すだけではない。「自治体の保健課を通じて住民の方に広く利用していただくという取り組みも進めています」と語るのは、公共営業部担当部長の河北吉隆。測定システムと市民の間をダイレクトにつないでいきたいという。
疲労を“見える化”する画期性、測定の簡便性、そしてクラウド環境を生かした高度な解析を実現した「疲労・ストレス測定システム」が、先制医療の新たな未来を切り拓こうとしている。


社会インフラ事業グループ
社会インフラ事業推進プロジェクト
松原孝之


第一営業本部 兼
西日本公共営業推進本部
堀田誠


第一営業本部
公共営業部
河北吉隆

 
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