日本のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)は、恐らく世界品質のサービスを提供している、非常に優れた「店舗」です。
都会に住んでいると、大概、歩いて5分程度の場所にコンビニがあって、「おにぎり」「冷凍食品」「パン」「お菓子」「野菜サラダ」「コーヒー」など、安くて美味しい食事が簡単に手に入ります。しかも24時間営業なので、深夜でも手に入ります。
こんな便利な店舗が身近にある国は、世界中を探しても日本だけではないでしょうか?
生活環境の厳しい国々と比べると、日本はまさに「お伽の国」なのです。
海外駐在時、私には非常に重要な仕事がありました。それは、「出張者のアテンド」です。現地に不慣れな出張者を空港まで迎えに行って、ホテルに送り届け、翌朝、訪問先に連れて回るのです。もちろん、食事も段取りしなければなりません。
今この瞬間にも、手間と時間がかかる「出張者のアテンド」の任務に忙しい駐在員が、多数いらっしゃることでしょう。
今回ご紹介するのは、60歳を超えた人をアテンドさせていただいたときのお話です。
中華レストランにお連れしたのですが、「俺、脂っこい物を食べられないんだ」と言い始めたのです。あれやこれやと料理をお薦めしましたが、結局、食することができたのは「サラダ」だけでした。なんと、その方は極度の偏食とアレルギーがあって、それに関する事前連絡はありませんでした。
彼は4週間にわたる現地滞在中、食に関する困難と悲劇を経験することになったのです。
次の日から、私の悪戦苦闘が始まりました。詳しい話をお聞きすると、イタリアン、チャイニーズのみならず、日本食でも食べられる物が限られていました。
わずかに、米、お味噌汁、野菜、煮豆などの、まさに「精進料理」のような物しか食べることができないと分かったときには、愕然としてしまいました。
それでも2週間程度は、我慢して街のレストランやホテルで細々と食べられる物を食べていただきましたが、みるみるうちに消耗してしまい、非常に体調が不安になる状況になってしまったのです。
そして、とうとう体力の消耗に耐えかねた彼は、こう言ったのです。
「山本君、毎日、こんなに豪勢なレストランでなくていいよ。俺、コンビニのおにぎりで十分だから…」
「恐らく、ここではコンビニのおにぎりが一番高くつくと思います。」
笑い話のようですが、本当の話です。結局、一計を案じた駐在員の夫人方が、彼のためにおにぎり、お漬物、和風の煮物などを毎日作って提供したのでした。
この一件から、日本から出張者が来るときには「食べられない物はないか?」という質問を投げることにしたのでした。
一方で、事前連絡があれば、まったく問題が起こらない事例もあります。
駐在員の私のところに、本社の秘書室から一通のメールが届きました。
「今度そちらに出張される役員ですが、先般、胃の手術をしたために、食事については少量を多数回(5-6回)に分けて取る必要があります。あまり脂っこい物、塩分の多い物は食べることができませんので、ご配慮いただきますようお願いいたします。また、決まった時間に薬を飲まなければなりませんので、常に水をご用意いただきますよう、お願いいたします」という依頼事項に続いて、食べても問題の無い物が詳しく列記されていました。
こういう事前連絡があると、アテンドする側の駐在員はあらかじめ準備することができるので、とても助かるのです。
海外出張は、旅行社が企画する旅行のように至れり尽くせりではなく、ビジネス上の闘いに出向いていくのですから、「腹が減っては戦はできない」のです。
海外で十分に能力を発揮し高い成果を上げるためには、健康であることが最重要事項です。健康であるためには、まずは「十分に栄養のある、安全な食事」を取ることを心がけなければなりません。
海外危機管理の基本は、「自分の身は、自分で守る」です。偏食や食事制限のある人については日本とまったく同じ水準は望めませんが、海外出張期間を無事に過ごせる程度の準備や工夫をしておくことも重要です。
しかし、それ以前の問題として、将来的に海外出張や海外赴任が想定される人は、普段から「好き嫌いなく」何でもバランス良く食べられるように心がけておくこと。健康な体を維持しておくことが、「自分の身を守る」ことにつながると言えるでしょう。
[山本 優 記]
※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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