2011年9月22日開催
ターゲットも目的も異なるBtoCとBtoB。しかし、いずれもWebサイトの登場でビジネスの可能性が広がり、さらにここに来てソーシャルメディアが加わることで、どう顧客と向き合うべきか、頭を悩ます企業担当者が増えています。そこで7回目となるNextWebセミナーでは、BtoCおよびBtoBの双方の視点から、最適なWebマーケティングのあり方を考察。3つのセッションから見えてきたのは、意外にもシンプルなヒントだったようです。
株式会社ロフトワーク 代表取締役社長 諏訪 光洋 氏

Web制作会社としてBtoCにもBtoBにも関わってきたロフトワークの諏訪氏は、冒頭で、AIDMA(注1)やAISAS(注2)の基本であるファネル理論(見込み顧客が購買に至るまでのプロセスをじょうごに例え、マーケティングのゴール達成に向けて改善点を見つける考え方)が、昨今のソーシャルメディアの台頭により変わりつつあることを指摘。
「マーケティング支出の70~90%が検討・評価の段階に当てられるのに対し、消費者は、評価や絆の段階により大きな影響を受けるようになっています。加えて、他者の支持が購入を促す最も強力なカンフル剤となっていることを考えても、すべての顧客が購入に至るまでのマーケティングプロセスを再構築する必要があります。その基本になるのは、顧客の声を聞くことです(諏訪氏)」。
諏訪氏は、P&GやBESTBUY、スターバックス、良品計画、レナウンなどの取り組みを例に挙げながら、「BtoC企業は、いずれも顧客との関係性を築くためにどうすれば良いかを考えている。一方、未だに多くのBtoB企業は、リード(見込み顧客)を取りこぼし続けている」と説明。
「息をするかの如く当たり前にマーケティングを行ってきたBtoCに対し、BtoBのマーケティングは長いこと手付かずでした。そして今、企業はWebを使うことで非常にち密なWebマーケティングが行えるようになり、数値を見ながらPDCAを回し、継続的に改善していくことも可能になったのです。これにより、リードの取りこぼしが改善され、顧客との関係性が重要になり、今や顧客と一緒にイノベーションをしていく時代を迎えています。
こうして企業と顧客の距離が圧倒的に縮まる中で、関係性をどう築いていけばよいのか。それは“オープンで継続的な対話”を意味する『エンゲージメント』という言葉に集約されます(諏訪氏)」。
諏訪氏は最後に「BtoBもBtoCもエンゲージメントを重視すべきなのは同じ。マーケティングでコントロールできないものが増えつつある中で、関係性を強める努力ならできるはずです。その起点となるのがWebやソーシャルメディア。尻込みしていたら、あっという間に取り残されます」と語り、「対話のためのツールづくりなら、我々ロフトワークにお任せを!」とアピールしていました。

株式会社日立システムズ 営業統括本部 マーケティング本部
Webマーケティング推進センタ 副主管 鹿島 泰介
第2部では、BtoB企業の代表として、当社Webマーケティング推進センタ副主管の鹿島が登壇。 インターネットを核としたメディア連携によるデジタルマーケティングから、顧客目線で親和性を高めたインタラクティブマーケティングへの流れを解説しました。BtoC Webサイトに学びつつ、BtoB Webサイトにできること、やるべきことに迫りました。
はじめに、Webコンセプト構築の肝となる顧客経験価値に言及した鹿島は、「Webサイトに入ってからの流れるようなプロセスこそが重要。ユーザビリティやアクセシビリティに加え、驚き・楽しさ・面白さ、顧客視点が鍵を握ります。つまり、問い合わせや資料請求だけを目指すのではなく、いかに気持ちよくさせて、お気に入りに入れてもらえるか。例えば、驚き・楽しさ・面白さが感動や共感を生み、最終的には再訪力や回遊力につながります」と説明。
さらに、こうしたポイントを踏まえたうえでのデジタルマーケティングのあり方について解説しました。
「営業スタイル変革の時代。なんらかの営業活動をする際は、必ずWebを絡めること。これがBtoB企業のこれからのマーケティング方法です。ただし、顧客を囲い込もうとするのは賢明でない。きちんとした情報、ユーザビリティ、エクスペリエンスを顧客が経験できるなら、必ずそのWebサイトは囲い込まれます。 そうなると、無視できないのがWebサイトの印象です。常に見られ、比較され、評価されていることを忘れてはなりません(鹿島)」。

顧客視点のユーザーエクスペリエンスの追求が価値を生む
また、「流入ページから目的のページへ、最短ルートで誘導できるWebサイト構造も必要になる」として、次のようなマーケティングアクションを提示しました。
「こうした考え方をベースとしながらも、これからのマーケティングは、よりインタラクティブ性を高めていく必要がある。お客さまの声に耳を傾け、商品開発に生かして行くべき。ただし、Webサイト側は黒子に徹して、活発な議論を促す潤滑油となるべきです(鹿島)」。
一方で、こうした取り組みを実現するため、技術面では次の点に注力すべきであるとしました。
また、インタラクティブマーケティングを戦略的に実践していくうえで参考にすべきなのが、フィレンツェの街並みだと言います。「一つ一つの屋根の色は違っても、ふかんすると同じ色に見える。これと同じで、個性を最大限に発揮しつつ、ふかんして見たときに○○だ!と分かる。そんな、2つの視点から押したり引いたりのブランディングが重要」と語る鹿島氏の印象的な言葉に、会場はこれからのマーケティングのあり方を重ね合わせていました。
株式会社良品計画 web事業部 部長 奥谷 孝司 氏

第3部は良品計画の奥谷氏をゲストスピーカーに迎え、BtoC Webサイトの取り組みを紹介いただきました。
同社の無印良品ネットストアは、「お客さまとの時間(顧客時間)」を大切にしている点が大きな特徴です。奥谷氏は、その理由を「当社の強みは品揃えであり、お客さまの生活の中にたくさん溶け込んでいる。それなら、競合他社がやりきれていない顧客時間を攻めて、お客さまとの絆を作ろうと考えたのです」と説明しました。
「具体的な施策を検討するにあたり260万人の会員動向を調査したところ、60%以上がネットストアを利用しないのにメンバーでいてくれているという事実が判明しました。
つまりこれは、店舗があって初めて会員になってくれているということ。そこで、インターネットを利用するのも店舗を利用するのもお客さまの時間であり、その両方を大切にしたいと取り組んだのが次の施策です(奥谷氏)」。

「従来は、誰に売れているかを見ていなかったのですが、今は、お客さまの時間を追えるような双方向ツールでCRMを実施していこうとしています。ソーシャルメディアの広がりは、確実にお客さまとの時間の共有を可能にしてくれます。ポイントは、いかにインターネットと店舗を行き来してもらうかです(奥谷氏)」。
実際に、同社の戦略は以下のような成果を生み出しています。
こうした一連の取り組みを振り返り、奥谷氏は「ソーシャルメディアとの連携でCtoC的に情報が流れていきます。そこでCtoCを放置しておくのではなく、CtoCを見て、情報の流れをCtoBにし、オウンドメディアにお客さまを戻さなくてはなりません。そのためには、my MUJIのような企業プラットフォームが必要になります」と総括。
「長期的な視点で、顧客にとってのライフタイムバリューを考え、そのためにソーシャルメディアを活用する。当社にとってのソーシャルメディアは、コアなファンが集まるイベント会場。お客さまとの会話、対話のかたまりが我々の新しいブランド価値となり、競争優位と模倣困難性を形成することになると信じています(奥谷氏)」。
全セッション終了後は、ロフトワーク諏訪氏、当社鹿島、良品計画奥谷氏によるパネルディスカッションが行われました。話題の中心はBtoCに学ぶBtoBマーケティングのあり方。
「小さな積み重ねによって今が生まれるのであり、BtoBだからこそ、より濃密な接点が作れる可能性がある」という鹿島の見解には、多くの参加者が勇気付けられたようです。

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