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A社既成パッケージとセミオーダーパッケージの一騎打ちになりました。

2013年4月、「TENSUITE(旧HICORE-Products)」は、日立 製造・流通業向け基幹業務ソリューション「FutureStage」に 統合しました。 ※本事例に記載の商品情報は初掲載時のものです。

  • 業種製紙用網・ミクロ製品製造
  • 特長複雑な工程管理

日本フイルコン株式会社様(以下、日本フイルコン様)では、当初、A社既製パッケージの生産管理システム導入が「ほぼ決定」していましたが、それを覆して、日立システムズの「HICORE-Products」が逆転採用されました。その経緯と理由を、生産管理システム導入の取りまとめをされた内藤 秀春氏(写真中央右)、嶺 智子氏(写真中央左)に詳しく伺いました。(写真左:日立システムズ SE 奥村、写真右:日立システムズ 営業 赤松)

(お客さま概要)

日本フイルコン株式会社様について

日本フイルコン様は、抄紙の会社として大正5年に創業しました。抄紙とは、紙を抄く(すく)こと。大まかに言えば、紙を抄くための「網」を作って、製紙会社に納める仕事です。その後、抄紙で培った技術をコンベア、フィルタ、水処理装置、ミクロなどの事業に転用し、事業を拡大してきました。

基本情報

お客さま名 日本フイルコン株式会社
上場取引所 東京証券取引所(第一部)
事業内容
  • 紙・パルプ用網および各種製紙関連資材・機器の製造、加工ならびに販売
  • 各種工業用網および各種関連資材・機器・システムの設計、製造、加工ならびに販売
  • フォトファブリケーションその他各種製法による精密加工品の設計、製造、加工、販売および機器の販売
  • 水処理装置、環境保全装置ならびに各種関連機器・システムの設計、施工、製造ならびに販売
  • 土木建築、管工事に関する設計、施工ならびに監理
  • 複合資材・樹脂加工品および化学薬品の製造・販売
  • 不動産の賃貸借ならびに管理
  • 宿泊・スポーツならびに娯楽施設の運営
  • 酒類および食料品の輸入販売
  • 前各号に関連する一切の業務
従業員数 476名(平成25年11月30日現在)

(導入の背景)

導入前の生産管理 - 複雑になっていく工程の管理にシステムの機能が追いつかない

― 「HICORE-Products」を導入する前は、どのようにして生産管理を行っていたのですか。

「HICORE-Products」を導入する前も、別の生産管理システムは使用していました。しかし、複雑になっていく工程の管理にシステムの機能が追いつかなくなり、結局、人間の手作業やエクセル管理が入ってきました。その方が早くて正確だったのです。

― そのシステムの入れ替えを決めた理由は何ですか。

そのような属人的な体制、つまり「人の気働きに頼る」体制では、いつか人の方がパンクするでしょう。 2004年頃には、生産管理の担当者の負担は端から見ても過大でした。「本当の意味で生産管理を合理化、システム化しなければならない(新たなシステムを導入しよう)と、事業所内の意見がまとまったのは、2004年春のことです。

(パッケージの選定)

2社のプレゼンと公平を期するための「投票」

A社パッケージソフトの思想に違和感

内藤氏

― 製品のリストアップはどのように行いましたか。

インターネット検索を通じて製品調査を行い、以下の3社が選考に残りました。
この段階では、日立システムズは候補に入っていませんでした。

  • 大手IT商社
  • 大手SI
  • 生産管理パッケージ大手A社

全製品についてデモを見ました。うち、大手IT商社と大手SIについては、価格面や仕様面でフィットせず選外となりました。
生産管理パッケージ大手A社は、生産管理システムに特化した会社で、導入実績の圧倒的な多さが特色です。この時点では、A社の採用がほぼ決定していました。

― しかし、最終的に日立システムズを採用されました。A社は何がいけなかったのでしょうか。

A社は導入実績が多いのは素晴らしい。工場の現場部門は、これで良いだろうと納得していました。
しかし、個人的には、A社の既製パッケージの思想にはどうしても違和感がありました。
基幹システムのリプレースは途中で引き返せません。システムが業務にフィットしないで、業務をシステムに合わせなければならないとなると、生産性は必ず落ちます。慎重の上にも慎重を重ねる必要があると考えました。
このままA社を導入していいのか、悩みました。

表面的には「カスタマイズ可能」と謳ってはいるが、どうも内実が怪しい

― A社のパッケージソフトの思想にどういう違和感がありましたか。

A社の営業担当の話の隅々には、「ウチのソフトの仕様はベストプラクティスであり、決まっていて変えられない。
そっちの業務をソフトに合わせて変えてほしい(服のサイズに、体を合わせろ)」と言いたげな気配が、見え隠れしていました。

表面的には「カスタマイズ可能」と謳ってはいるけれど、どうも内実が怪しい。
例えば、こちらが細かい要望を出すと、「それは人間系の運用で対処しましょう」と回答してくる。人間系の運用って何なのでしょう。
要するに、「ソフトは変えられないから、人間が気を回して何とかしてください」という話なのかと。それじゃ、以前の属人的なシステムと大差ありません。

でもA社は、見せ方は上手でした。製品プレゼンの時にも、ウチの製品仕様書にそっくりの画面を作って、それを生産部門の前で披露するのですね。
我々情報システムの目から見ると、「これって、帳票の表面だけ似せているだけじゃないかな」と首をかしげます。でも、システムに詳しくない人は、「今までと同じ帳票が使えるのか。このシステムは、業務とのフィット感が高そうだ」と思い込んでしまいます。
なるほど、こうして客先の人心をつかんでいくわけかと。そういうやり方を見て、違和感が募りました。
A社も、エンジニアの方は誠実で良かったのです。でも営業のやり方が裏技めいていて、ちょっとこの会社とは長くは付き合えそうにないなと思いました。

情報システム部門として、改めて、システム会社を探し直すことにしました。そしてインターネット探索をして見つけたのが、日立システムズの『HICORE-Products』です。

セミオーダーの方が向いているかもしれない

― 「HICORE-Products」の最初の印象はどうでしたか。

「コアがあって、そこに肉付けしていくイメージ」、「土台はまずあって、その上に施主の要望通りの家を建てるイメージ」、「日立系の会社なら、製造業の業務への理解も期待できる」など、良い方向に連想が発展していきました。
インターネットから資料請求をしたところ、さっそく営業の赤松さんから電話がかかってきたので、まずは来社していただき、説明を受けてみることにしました。

これは、机上の空論ではなさそうだ

― 日立システムズの営業担当は、初回訪問で何をしたのですか。

営業の庄子さんと赤松さんが来社されて、製品のコンセプトや仕組みの説明をしてくれました。
セミオーダーの製品なので、既製パッケージのような完成形のデモを行うことは難しいとのことでしたが、正直な態度には好感が持てました。

その後、「製造部門の業務の流れ」について記載したRFPのような資料を渡しました。同じ資料は、A社にも渡しています。
しかし、この資料に対する2社の反応は大きく異なりました。

― 資料への2社の反応は、どう異なっていたのですか。

まずA社ですが、「こちらが資料を渡して、相手が受け取った」という、ただそれだけでした。
A社はパッケージ製品の会社ですから、あまりこちらの業務現況には興味がなかったのだと思います。

一方、日立システムズからは一週間後に精緻なレポートが提出されました。
こちらが資料に記した業務の流れを一覧表に体系化してあり、さらに一覧表の各項目に対し、「『HICORE-Products』を使って改善できること」が一対一対応で書いてありました。
我々が渡した資料は内部資料であり、決して分かりやすい文書ではありません。それを一週間でよくここまで解析できたなと驚きました。

二回目の打ち合わせには、営業のみなさんとSEの奥村さんのほかに、日立製作所で長年製造業SEの仕事をされていたというコンサルタントも来社されました。その方のお話はとても参考になりました。

― どのように参考になったのですか。

そのコンサルタントには製造業SEの経験が30年以上もあり、私たちが知らないことも多くご存じでした。
いろいろな要件定義の際にも、単にコンピュータシステムの機能の話を進めるのではなく、そこに「生身の人間がいる」ことを意識した、実際の工場での経験に基づいたお話をいただけました。
もはやこれは、机上の空論ではありません。

公平を期するために、『投票』を行う

― そのような担当メンバーへの好印象により、日立システムズへの逆転受注が決まったわけでしょうか。

いいえ、違います。
個人的には日立システムズに好感を持っていましたが、工場スタッフ全体の総意としては、A社のパッケージを導入することで、ほぼ決定していたわけです。
情報システム部門の独断で、その決定を覆すわけにはいきません。そこで、以下のような方式で、公平に決定することにしました。

  • 日立システムズとA社、2社にそれぞれプレゼンを行ってもらう。
  • そのプレゼンを両方見た社員を集めて、無記名投票を行う。
  • 投票が多かった方を採用とする。

― 具体的にどのような「投票」方法でしたか。

箱を作って、そこに紙を入れる。文字通りの投票、入れ札です。
投票ならば公平です。仮に投票の結果、個人的に好感が持てなかったA社が選ばれたとしても、それはそれで工場スタッフ全体の総意なのだから仕方がないと考えることができます。
プレゼンは最初にA社、その後が日立システムズという順番で行いました。

A社のプレゼン、日立システムズのプレゼン

― まずA社のプレゼンの印象からお伺いします。いかがでしたか。

一言で言って「魅せるプレゼン」でした。

我々が席に着いた時、すでにA社のパッケージが起動して、スクリーンに映っていました。その後、インターフェース画面を切り替えながら、製品の機能や便益を流麗に歯切れ良く説明していました。
プレゼンの佳境で、当社の製品仕様書にそっくりの帳票画面が映し出されました。(少し前に述べた、『見た目だけ真似たのじゃないか』と疑われた帳票画面のことです)。
その画面が出たとき、社員の何人かの顔に「これはすごい」という驚きの表情が浮かびました。
プレゼンターであるA社の営業マンが、私の方を向いて勝ち誇ったように見えました。

― 続いて日立システムズのプレゼンはいかがでしたか。

日立システムズのプレゼンは、デモ画面や見た目の派手さはなく、セミオーダーの概念中心の説明でした。

内容としては、販売管理や生産管理といった基幹システムは、その会社のビジネスモデルと一体化するべきもの。基幹システムで競争的差異を創造するためにあるべき姿はオーダーメイドであり、そのメリットを効率よく実現するのがセミオーダーとのことでした。
それゆえに、プレゼンの段階で見せられる画面もサンプルでしかなく、プロジェクトの進め方も両社がより密着した形になると説明を受けました。

最後は営業の庄子さんが、「ぜひ、一緒にやらせてください」と頭を下げて終わりました。
こうして2社のプレゼンが終了。その後、投票を行いました。

開票の結果

― 投票は何人で行ったのですか。

19人です。業務的に関連する製造スタッフおよび管理職の面々です。
生産管理システムはみんなが使うシステムなので、なるべく多くで投票するべきだと考えました。
ただし、投票参加条件は「日立システムズとA社のプレゼンの両方を見た人に限る」としたので、仕事が忙しくて片方のプレゼンしか見られなかった人は参加できませんでしたが。

― その19人には、内藤さんと嶺さんも含まれていたのですか。

いいえ、我々は、含みませんでした。
情報システム部門を混ぜると、判断に公平を欠く恐れがあると考えました。
あくまで現場ユーザーに選んでもらおうと。

― 開票の結果はどうでしたか。

日立システムズ16票、A社3票でした。

たぶん、生産管理システムはどうあるべきかという思いと、業務理解力が顕われた精緻なレポートが、現場ユーザーの心をつかんだのではないでしょうか。

こうして日本フイルコンの生産管理システムには、日立システムズの『HICORE-Products』を採用することが決定しました。
2005年4月のことです。
その後、SEの奥村さんを始めとする日立システムズの皆さんの尽力により、システムは無事稼働しました。

(導入効果)

「HICORE-Products」の導入効果

導入後、目に見えて改善された3つのポイント

内藤氏、嶺氏

― 「HICORE-Products」を使い始めて、良くなった点は何ですか。

使い始めてまだそれほど経ちませんが、それでも目に見えて改善した点が以下の3つです。

  • 生産管理担当者の負担が減った。
  • 生産管理のデータ入力が、実作業の進捗とシンクロするようになった。
  • 生産の進捗状況を工場スタッフ全員で共有できるようになった。

― 順々にお聞きします。良くなった点1.「生産管理担当者の負担が減った」とは、具体的には。

平たく言うと、「生産管理担当者の過剰残業が減って、普通に退社できるようになった」ということです。

以前は、生産管理担当の人が退社するのはいつも最後でした。「お先に失礼します」と声をかけるのはいつも我々。そして翌朝出社すると、生産管理担当の人はもう出社している状況でした。

でも、最近はわたしたちと同じ頃には退社できています。それでいて、生産管理の仕事の質は落ちていない。むしろ上がっている。
つまり効率化したということです。

― 良くなった点2.「生産管理のデータ入力が、実作業の進捗とシンクロするようになった」とは。

以前はシステムの使い勝手が悪かったので、各工程でのデータ入力は作業が一段落ついた時にまとめて行っていました。
しかし「HICORE-Products」は使い勝手が良いため、仕事をひとつ終えるたびにデータを逐一入力しても苦になりません。
システム内のデータと実際の生産進捗がほぼシンクロするようになりました。

嶺氏

― 良くなった点3.「生産の進捗状況を工場スタッフ全員で共有できるようになった」とは。

システム内のデータが実際の生産進捗とシンクロしているということは、つまりシステム上で、今現在の工場における生産進捗をスタッフ全員が正しく把握できるということです。

以前はデータ入力が「後でまとめて」行われていたため、システム内のデータは生産進捗の「現況」を反映できず、生産進捗を正しく把握することに難儀していました。
自分が担当する工程において、次にどれぐらいの仕事が来るのかは、経験値で推測するほかはなく、気がつくとドカっと仕事がやってきて、あわてて対処するという状況でした。

しかし、『HICORE-Products』の導入後は、受注、原料調達、仕掛かり、完成の各段階の状況を全員が正確に把握できています。
これは格段の進歩です。

どのような製造業に向いているか

― 「HICORE-Products」は、どのような製造業に向いていると思いますか。

生産工程に特徴がある製造業にも向いているでしょう。そういう製造の生産管理には、パッケージよりもセミオーダーの方が適していると思います。

(まとめと今後の展望)

今後、システムをどう発展させていくか

― 今後は、システムをどのように発展させていく予定ですか。

生産と会計の連携を強めたいと思います。
「受注 → 原料調達(買掛) → 仕掛品 → 完成品 → 納品 → 売掛 → 入金」という過程の中で発生するお金関係のデータの増減を、ダイレクトに会計システムに伝達していきたいと考えています。

― 日立システムズへの今後の期待をお聞かせください。

今回、日立システムズは、実直な姿勢と生産業務についての深い理解により、優れた生産管理システムを開発してくださいました。おかげで日本フイルコンの生産管理は、大変に効率化されました。
今後は、先に述べた「会計システムとの連携」などの改良においても、さらに日立システムズの支援を仰ぐことになると思います。
これからも、現場密着の姿勢と高い技術力とを継続提供してください。期待しています。

お客さまについて

社名
日本フイルコン株式会社
設立
昭和11年3月18日(創業大正5年4月)
本社所在地
東京都稲城市大丸2220
URL
http://www.filcon.co.jp/

取材および写真撮影にご協力いただいたお客さま、ご協力ありがとうございました。

取材日:2008年1月

本事例に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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