2013年4月、「TENSUITE(旧HICORE-Products)」は、日立 製造・流通業向け基幹業務ソリューション「FutureStage」に 統合しました。 ※本事例に記載の商品情報は初掲載時のものです。
山一化学工業株式会社様(以下、山一化学工業様)の専務取締役 朝隈庸陽 氏(写真右)は入社以来製造現場に携わり、現場の必要、お客さまの必要から経営にあたられています。一方、常務取締役 斎藤誠宏 氏(写真左)は長く金融機関に勤められた経験を持つ、管理部門のエキスパートです。原油高など化学業界を取り巻く環境が変化する中、会社経営にあたられているお二人に本社経営サイドの視点で生産管理システム選定のポイントについて伺いました。
― 山一化学工業様の事業内容について、教えてください。
(朝隈氏)55年の豊富な技術とミキシングノウハウで、各種有機溶剤を製造しています。
この有機溶剤が事業の90%で、商流はOEMや商社へ卸すものが大半です。その他に樹脂製品、古い塗膜を落とすための剥離剤など、機能商品を自社ブランドで手掛けています。
溶剤の原料は「ナフサ」で、原油を蒸留すると最初に出てくる粗製ガソリンです。
原料を仕入れ、ブレンド、小分けし、製品化しています。製品在庫はあまり抱えていません。というのも、ほとんどが受注生産のためです。
当社の強みは、多品種少量生産とスピーディーな納品です。
当日受注受付は15:00まで、リピート品は当日発送を実現しています。これは、溶剤の専業だからできる強みです。石油缶に換算すると、1日1万缶を生産・発送しています。
受注→販売管理→生産管理→製造指示→プラント稼働→発送までが一連の流れです。
このような短納期を実現するため、基幹システムはとても重要な役割を果たしているのです。
お客さま名 | 山一化学工業株式会社 |
---|---|
事業内容 |
|
従業員数 | 本社33名、工場79名(平成24年11月28日現在) |
― 既存の基幹システムである生産管理システムを入れ替えるということは、大きな決断だと思いますが、なぜ導入に踏み切ったのですか。
(斎藤氏)既存の生産管理システムは、信頼性や保守性、いわゆるRAS(※1) に課題がありました。
具体的には、システム障害が起こった場合、生産ラインを半日以上停止せざるを得ませんでした。
導入後6年以上経ち、老朽化によるシステム障害の頻度もますます増加することが予想されました。
お客さまが望まれているのは、安定した品質と安定供給、スピード対応だと考えています。
品質管理は専用の施設を作るなどの対応により、安定した品質の製品供給をしていますが、安定供給という観点から、生産ラインを半日止めるリスクは経営課題でした。
また、既存の生産管理システムは仕様書のメンテナンスも不十分で、ブラックボックス化していました。
保守性だけでなく、RASIS(※2)でいう保全性・機密性まで考えて新しいシステムの導入に踏み切ったのです。
※1 RAS:Reliability(信頼性), Availability(可用性), Serviceability(保守性)
※2 RASIS:Reliability(信頼性), Availability(可用性), Serviceability(保守性), Integrity(保全性), Security(機密性)
― 生産管理システムの構築を任せる会社の選定にあたり、何を基準にしましたか。
(斎藤氏)RASISを実現する技術力とROIを基準にしました。
今回は特に、他社が構築した販売管理システムとプラント制御システムの間で製造指示を中継する生産管理システムの構築でしたから、連動しなければ使い物になりません。
もちろん連動するだけでなく、RASISを実現してもらわなければなりません。
さらにこの生産管理システムは設計書不備のため、リバースエンジニアリングが必要でした。言語を解読して現状分析のための仕様を起こさなければなりませんでした。
したがって、それを可能にする高い技術力を求めました。
この技術的条件を満たせると判断したのが、既存のプラント会社系SIベンダー、実績豊富なパッケージベンダー、日立システムズの3社でした。
各社の提案内容ですが、実績豊富なパッケージベンダーはカスタマイズが多くなり過ぎて、最も高価に見積提案してきました。
特に仕様がブラックボックスな部分は、仕様が明確になっても対応できない可能性が付記されていました。既成パッケージだから仕方ないのでしょう。
既存のプラント会社系SIベンダーは、一式○○万円と簡潔な見積でした。なぜこの見積になるのか説明も不十分なので、この時点からブラックボックスでした。
ROIの"「 I 」(投資)"で言えば、実際日立システムズが一番安価でした。
安ければいいというものではないし、後で追加見積となっては最悪です。
しかし、日立システムズの『HICORE-Products』は業種テンプレート+部品活用型ソリューションの「セミオーダーメイド」と言うことで、安価でオーダーメイドのように柔軟に対応できることを分かりやすく説明してくれました。
また、本稼働後もシステムを進化させるアフターサービスと称して、チューニングレベルのシステム改修を定期保守料の中で提供していただいています。そのような他社とは一線を画したサポートも魅力でした。
― 基幹システムである既存の生産管理システムの入れ替えに、トラブルや不安はありましたか。
(斎藤氏)特に、トラブルはありませんでした。
ただし当初は、プラントへの製造指示という日立システムズにとっても未経験で、ブラックボックスな機能が含まれるシステムを入れ替えるということで、不安はありました。
― システム入れ替え後、何が変わりましたか。
(朝隈氏)SIベンダーとの対話が、成り立つようになりました。
既存システムのSIベンダーは、システム構築を依頼してから何か月も経過し、仕上がったシステムの説明を受けるという形でした。
つまり、依頼してから完成するまでの「間(あいだ)=やり取り」があまりなかったのです。
一方通行で、実際のイメージが湧きにくい説明でしたね。
このシステムには何ができるのか、このシステムにはどこまで期待して良いのか、システム化しようにも判断材料が乏しく、現状に即した追加投資が十分できなかったですね。
「システム化といっても、こんなものかな。」と思うしかありませんでした。
― 「システム化といっても、こんなものかな。」という印象は変わったのでしょうか。
(朝隈氏)日立システムズの場合、実際にプロジェクトが始まると、基本設計はモックアップと言う手法で進められました。
打ち合わせの都度、完成イメージの画面や帳票を用意していただいて、システム要件に齟齬がないか、お互い確認しながら進めました。
この過程が重要でした。
システムに対して共通認識が生まれ、なぜこの機能、この処理が必要なのかをメンバーが理解していきました。だから、次にシステム化する判断材料、プライオリティも共有できました。
つまり、本稼働後も「進化し続けるシステム」になるようにプロジェクトが進められたのです。
現に、稼働後は2ヵ月に1度定例会を開いて要望を聞き、不明点の確認、不具合の対応、チューニングレベルのシステム改修に対応してくれています。
― 私(ライター)の家族が薬品卸会社で購買の仕事をしているのですが、半年前からシステム入れ替えに伴うトラブルのため残業に明け暮れています。システム入れ替えにトラブルはつきものではないでしょうか。
(斎藤氏)それは、日立のシステムですか?
― ・・・確認していません。
(斎藤氏)違うと思いますよ。
日立は "GO"の判断ができなかったら、「本稼働は延ばしてください。」と言ってきます。
前職で色々なメーカーと付き合ってきましたが、日立は「重厚長大」の文化なのでしょう。見切り発車をして現場を混乱させるようなことはなかったですよ。
危ないと思ったら「時間を下さい。」と言える。
逆に言ってこない時は「大丈夫だな。」と思える。そんな社風がありますね。
日立は組織で対応する社風もあって、現場のSEに想定外のことを「頼むよ。」と依頼しても、「このくらい、やっておきます。」というのがない。安請け合いしない。逆にそういう点が評価できますね。
― 今後の日立システムズへの期待をお聞かせ下さい。
(朝隈氏・斎藤氏)当社はミッションである「多様なニーズにマッチするワイドバリエーションでスピーディーにお応えする」これをさらに追求していこうと考えています。
今回、日立システムズとプロジェクトを組んでシステム構築したことで、「進化し続けるシステムの作り方」、その入口が分かりました。
RASISという切り口では一番問題のあった製造指示システムは改善されましたが、システム全体のさらなるRASIS向上にご協力ください。
取材および写真撮影にご協力いただいたお客さま、ご協力ありがとうございました。
取材日:2007年3月
本事例に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。