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株式会社日立システムズ日立システムズ 海外進出支援サービス

製造業のグローバル戦略を加速させるITセミナー~貿易・投資アドバイザーが語る進出日系企業の動向と問題点~

日立システムズは、3月6日(水)新丸ビルコンファレンススクエアにて「製造業のグローバル戦略を加速させるITセミナー ~貿易・投資アドバイザーが語る進出日系企業の動向と問題点~」を行い、100名近いお客さまにご来場いただきました。本セミナーでは、ジェトロの貿易・投資アドバイザー樫山氏の基調講演に続き、当社のグローバルITソリューション「GNEXT」の紹介、PTCジャパンの後藤氏による講演という内容で開催しました。

セッション1 【基調講演】東南アジア、タイの進出日系企業動向と問題点

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 大阪本部 貿易・投資アドバイザー 樫山 映氏

FTAを考えながら進出先を検討するべき

写真:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 大阪本部 貿易・投資アドバイザー 樫山 映氏

基調講演では、ジェトロの貿易・投資アドバイザー樫山氏が登壇し、まずは世界全体のGDP、ASEANのGDP規模について説明しました。

「世界全体のGDPが約70兆ドルで、そのうちNAFTAが約18兆ドル、EUが約17.5兆ドル、ASEANは約2兆ドルです。ASEANというのは、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ブルネイ・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムの10カ国で、日本・中国・韓国を足したASEAN+3だと約16兆ドルで、さらにインド・オーストラリア・ニュージーランドを足したASEAN+6だと約19兆ドルと、NAFTAやEUのGDPを上回ります」(樫山氏)。

次に購買力平価やバーガノミクスから為替や実質GDPに続き、FTAにも言及しました。
「自社の製品が最終的にどこで売られて、原材料はどこにあるのかが問題です。例えば繊維産業だと生産コストの1/3から半分がワークコストで、そうするとワークコストが安い国へ進出することになる。その場合、消費国と原産国の間にFTAがあれば関税がかからないから、FTAを考えながら進出先を検討するべきです」(樫山氏)。

日本国内のサプライを守れなくなる

FTAが必要なのは最終消費国だとし「残念ながら日本は輸出相手国とFTAを結んでいないので、高い関税のまま輸出せざるを得ない。日本がFTAを結んでいるのはFTAを使わなくても良い中間製造国ばかりなので、日本は意味の無いFTAを沢山持っていると言ったら経済産業省の方に怒られました(笑)」と、日本の現状について説明しました

「日本の製造業大手はどんどん海外へ進出しています。例えば自動車メーカーのT社が海外の工場で50万台製造し、N社が5万台製造したとします。50万台製造する場合は部品メーカーも一緒に進出しますが、5万台では部品メーカーが進出できない。となると、N社はT社系メーカーの部品を使用します。そうすると、日本国内でT社系の部品メーカーがN社に売り込みに行く。このように系列破壊が起きて、日本国内のサプライを守れなくなる。同じことがシロモノやカメラ、電子部品産業で起きていくでしょう」(樫山氏)。

中国を撤退した企業が向かうのがタイやミャンマー

「中国への進出に関するマイナス要因として、政治・外交の問題が語られますが、今は中国元が高くなっているということあります。もう一つ、労働者との関係が難しい。最近聞いた話ですが、25年前から中国に進出していた着物工場は、このところ指示を聞かない人が多く、辞める人も増えていることから、製品の質が落ちている。このままでは生産がキープできないので、撤退せざるを得ないそうです。日本の品質管理は徹底しているから、合わないと感じる中国の労働者は多いのかもしれません。中国を撤退した企業が向かうのは、タイやミャンマーです。ミャンマーは繊維系が一部進出している程度ですが、評判が良いです」(樫山氏)。

そのほか、東南アジア各国の歴史や人種・宗教、携帯電話普及率やブロードバンド契約数などの国別動向についてデータで解説し、多くの資料を配布しました。

セッション2【主催者講演】中国・東南アジア拠点への情報インフラ導入事例のご紹介

株式会社日立システムズ グローバル事業統括本部 事業企画部 部長代理 大川 健

GNEXTの導入事例をご紹介

写真:株式会社 日立システムズ 大川 健

主催者講演では、当社グローバル事業統括本部の大川が、当社のグローバルITサービスGNEXTについて「海外進出および海外での事業拡大をめざすお客さまに向け、ITサービスと、パートナー企業との連携による専門サービスをワンストップで提供する」と説明し、2件の事例を紹介しました。

「中国に進出したこちらのお客さまは、電子メールの送受信が遅いうえに送信エラーも多く、またネットワークを通じて業務システムを使っていると、途中で使えなくなってしまうという課題がありました。さらに、グループウェアを活用できずに業務効率が低下するという問題もあり、複数拠点ネットワークの見直しを決断しました」(大川)。

「複数拠点のインフラ見直しを行ったお客さまは、拠点にIT担当者が不在、スケジュールが予定通りに進まない、仕上がりが思い通りにならないという課題がありました。この課題を解決するには、IT導入と見直しに関する知識と経験が必要で、自社に代わって対応できる業者を確保することが重要になります」(大川)。

海外でのセキュリティ対策方法

「海外でのセキュリティの問題として、まず労働者の離職による重要情報の流出があります。さらにフリーメールやSNSの利用、業務に関係の無いWebサイトへのアクセスによるウィルス感染のリスクなどがあります。私物のPCを会社のLANにつないで、音楽や映画をダウンロードするなんてこともあるようです。また、現地の外部業者が自由に事務所内に出入りする可能性もあります」(大川)。

海外でのセキュリティ対策として、以下の方法を提示しました。

  1. 企業情報の集中管理/アクセス管理と情報持ち出しの厳格化
    step1 ファイルサーバー/認証基盤の導入
    step2 シンクライアント環境への移行
  2. インターネットのウィルス対策の強化/利用制限/ログ管理の厳格化
    step1 UTM機能による多段のウィルス防御対策
    step2 抑止力としてのWebフィルタの導入/閲覧制限
  3. クライアント環境の整備
    step1 不正OSや不正アプリケーションの撲滅/ドメイン環境への移行
    step2 信頼できるウィルスソフトの導入と集中管理の実現
    step3 クライアントPCの調達ルール制定

最後に「当社では、現地事情に精通したパートナーとともに、ITのみならず、現地での調査・交渉・契約・調達・工事・ファイナンスなど、お客さまの海外進出をトータルソリューションでご支援します」とまとめました。

セッション3 【パートナー講演】グローバル競争力を支える製品開発システム~設計業務の海外現地化に対応したプロセス変革と情報化推進のポイント~

PTCジャパン株式会社 ソリューション戦略企画室 PLMシニアエキスパート 後藤 智氏

無駄が多くては競争に勝てない

写真:PTCジャパン株式会社 ソリューション戦略企画室 PLMシニアエキスパート 後藤 智氏

パートナー講演ではPTCジャパンの後藤氏が、製造業向けの製品設計・開発の業務プロセスにおける海外展開について講演しました。まずは製品開発のグローバル対応に関する課題について解説しました。

「海外向け商品の売り上げ比率が拡大すれば、海外仕様の設計が増加します。国や地域のレギュレーション、電力需要、顧客の要件といった組み合わせが増えれば、設計業務も増えていきます。設計部門のリソースがあればいいのですが、簡単に人員は増えないですし、現地の人材を使うにもスキルと品質の問題があります。今グローバルビジネスにおいて、設計部門のクオリティ低下が大きな問題になっています」(後藤氏)。

もともと日本の設計者には無駄な業務が多く、改善の必要性があるとしました。
「日本の設計者は、問い合わせ業務や調整業務など付帯的な業務が多く、グローバル対応商品の設計が加われば、さらに業務が増えてしまう。加えて、品質改善のために繰り返し発生する設計変更の手戻りもあり、非常に無駄が多い。無駄の多いブヨブヨした身体ではなく、無駄を省いた筋肉質でスリムな身体でなければ競争に勝てません」(後藤氏)。

現状を打破するための取り組み

海外市場向け商品を設計する際の問題として「設計製造のノウハウは属人化されていて、社内はもちろん海外のスタッフにもオープンになっていないケースが多い。その結果、設計変更などで現地からリクエストがあってもフィードバックに時間がかかってしまう」ことから、設計情報の一元管理が必要だとしました。さらに、設計変更の履歴を残すというトレーサビリティが重要で、その理由として「リコールの75%は設計不良」であると語りました。

また、設計パターンを事前に準備することで、コストダウンを図れる方法を提案しました。
「設計する前にできるだけ情報を集めて、松竹梅のように設計パターンのバリエーションを用意しておくと、どのような引き合いがあっても、効率良く製品の企画計画ができます。これはアメリカやヨーロッパ、韓国ではすでに行われていて、圧倒的なコストダウンができたという報告もあります」(後藤氏)。

設計業務プロセスの共通化

海外の企業と設計業務プロセスを共通化することについて「コストダウンを狙う戦術的なものから、アップルやデルのように一緒に新しいものを売り出そうという対等な関係というケースもある」とし、日本の現状について説明しました。

「どの段階から、現地あるいは相手先企業と付き合っていくのか、どこまで開示するべきか、設計企画段階から検討することが重要です。例えば韓国の大手企業は、2002年頃からグローバル設計基盤があり、社内の情報プラットフォームの外側に、国際分業できる設計コラボレーション環境を作っていました。これは2000年初頭の北米・欧州・韓国・台湾の企業では常識でした。残念ながら日本は、情報を開示して現地ニーズをキャッチアップしていなかった。そして今も進んでいません」(後藤氏)。

最後にさまざまケーススタディに続き、PTCのサービスを紹介しました。
「当社では、Windchillというグローバル設計基盤を用意しています。設計データの一元管理や変更プロセスの改善、海外生産拠点との設計情報コラボレーション、ERPとの連携など、ご興味がありましたらぜひお問い合わせください」(後藤氏)。

今回のセミナーは、製造業に特化したグローバル戦略をテーマにお送りしました。
ジェトロの樫山氏には、実質GDPと日本のFTA、海外進出で起きる系列破壊といったお話を分かりやすく解説いただき、話は進出先国としてのポスト中国候補にまでおよび、アジア各国の資料もあわせて、とても有益な講演となりました。
またPTCジャパンの後藤氏には、海外生産を行う際の具体的な問題点と解決方法を提示いただきました。特に、日本だけ立ち遅れているという設計業務プロセスの共通化についてのお話からは、早急な取り組みが必要と感じた方が多かったのではないでしょうか。
当日セミナー会場では熱心に聞き入っていらっしゃるお客さまも多く見られ、ご来場者アンケートでも参考になったという回答をたくさんいただきました。

日立システムズは、中国・東南アジア地域を中心に、お客さまの海外進出や海外事業拡大に伴う様々な経営課題をワンストップで支援し、グローバル事業の強化・拡大をめざします。