
2011年10月1日、それぞれ約50年の歴史を持つ日立電子サービスと日立情報システムズが合併。従業員1万人を超える情報サービス企業、日立システムズとして新しいスタートを切った。
ここからインスピレーションを得て、世界的なデザイナー吉岡徳仁氏は、この合併から生まれる新しい価値をテーマに作品の制作をはじめる。
日立システムズ社長の
橋と吉岡徳仁氏。2人の対談を通して、異なる価値の融合による新たな価値の創造が見えてくる。
―― ビジネスや私たちの生活など、様々な分野で大きなパラダイムシフトが起きつつあります。これについてお二人はどのように感じていらっしゃいますか。

デザイナー
吉岡 徳仁氏
(よしおか・とくじん)
吉岡 これまでは、物質ばかりを追求する時代でした。しかし、これからはより“人間的なもの”が重視される時代へと変化していくのではないでしょうか。そんな思いから、肌のぬくもりや手触りの感覚を大事にした作品づくりを心掛けてきました。モノに人の力を加えることで、新しい価値を生み出したい。こうした考えのもと新しい時代に向けた創作活動を続けています。
橋 クラウドコンピューティングに代表されるように、ITの世界でも、所有から利用へという動きが加速しています。サービスを提供する際に重要なのは、やはり“人間の力”を最大限に生かすこと。こうした時代の変化を見据え、当社は「Human*IT」という事業ブランドを掲げています。ITというと冷たいイメージがあるかもしれません。しかし、私たちは、ITに人の情熱を加えることで、お客様に驚きや感動を感じてもらえるようなサービスの提供を目指したいと考えています。
吉岡 その考えは、私の作品づくりにも共通しています。展示した作品はそれだけでは完成せず、人々に感動してもらうことで、はじめて完成する。どのようにすれば感動してもらえるか、その明確な答えは見つかっていませんが、絶えまなく模索し続けることが大事なのだと思います。
―― 新しい価値を生み出すために、お二人はどのようなことを重視されているのでしょうか。

株式会社日立システムズ
代表取締役 取締役社長
橋 直也
橋 当社は、日立電子サービスと日立情報システムズという2つの会社が合併して、生まれた会社です。両社とも約50年の歴史と実績を持つ、個性的な会社でした。そうした異なる2社をうまく融合・調和させることで、新しい価値を創造したいと思っています。実際、以前できなかった幅広い提案をできるようになったり、お互いに足りない技術を補ったりと、これまでにはない新しい可能性を従業員も私も感じています。
吉岡 異なるものの出会いによって、新しいものが生まれる。それは作品づくりの中で感じていることですし、今回の制作を引き受けるに当たって、イマジネーションを刺激された部分でも あります。最近、パリのオルセー美術館に作品を展示しました。100年以上前に描かれた絵画の前に、未来的な素材のベンチを置いたのです。過去の歴史と未来、まったく異なるものを対峙させることで別の見え方、新鮮な感覚が立ち上がってきます。化学反応、あるいはシナジー(相乗効果)といっても良いかもしれません。
ただし、単に2つの異なるものをあわせるだけでは、バランスが崩れ、コンフリクト(衝突)が起こってしまいます。それぞれが際立った個性を持ち、強いエネルギーを持ちながらも、バランスがとれていること。これが化学反応を起こすための条件なのではないでしょうか。
橋 それは、当社の組織づくりにも言えることですね。お互いに尖った部分を持っていること。そして、どちらか一方が他方に合わせるのではなく、それぞれのやり方や強みを尊重しながら刺激やよい影響を与え合う。そんな環境づくりを志向していくことが重要だと思います。
吉岡 合併をテーマにした作品の制作のために、御社のワークショップに参加させてもらった時に、その可能性を強く感じました。印象的だったのは、従業員の方々がいろいろな考え方、意見を出し合い、とにかく積極的に熱い議論をしていたこと。私がITに対して抱いていたイメージは、どちらかといえば静的なものでしたが、そのイメージは大きく変わりました。
橋 作品は、どのようなものに仕上がりそうですか。
吉岡 いまは構想段階ですが、素材には結晶を使いたいと思っています。これは、2つの成分を融合させて結晶化させたもの。時間の経過とともに結晶が育ち、偶然の美しさを生み出す。結晶の成長は不規則なように見えますが、そこには一定の規則性もあります。無機的な物質でありながら、自然な感覚を併せ持っています。テクノロジーと自然の融合という言い方もできるかもしれません。


今回、作品に使用される予定の結晶の素材
―― 最後に、将来に向かってどのような方向に進むのかお話しください。
吉岡 人生の限られた時間の中で、どれだけ人に感動してもらえるようなものをつくれるか。そのために、いろんな視点を磨いていきたいと思っています。その中で、歴史に残るような作品、時間を超えて価値を持つ作品を少しでも多く生み出すこと。これが私の目標です。
橋 お客様の役に立つサービスを創造し、提供すること。それをお客様に使っていただくことで事業は成り立っています。この基本を大事にしながら、社会の発展に貢献していきたい。日立グループは社会イノベーション事業に注力していますが、これからの時代、ITは不可欠の要素。日立システムズグループでは、確かなITサービスを提供する力を一層磨くことでその責任を担い、グローバルサービスカンパニーを目指して、走り続けたいと思います。

吉岡 徳仁氏 (よしおか・とくじん)
2000年吉岡徳仁デザイン事務所設立。プロダクトデザインから建築、展覧会のインスタレーションまで世界中の企業とコラボレートし、数々の作品がMoMAやポンピドゥーセンターなどの世界の主要美術館で永久所蔵されている。アメリカNewsweek誌日本版による「世界が尊敬する日本人100人」にも選出された実績を持つ。2012年1月には、パリMaison & Objet より、世界のクリエイションシーンに最も影響を与えているクリエイター1人に贈られるnow! design à vivre 2012 CREATOR OF THE YEARを受賞。
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